6
*
しばらく私は故郷に留まることにした。
誰もいない丘に座って、耳を澄ませると、やさしい風の音がした。
忘れてた…
この懐かしい音のこと…
都会の風はここのとは全然違う。
この風を忘れてたから、妹のことも忘れてたんだ、きっと。
あの世に行かなくても、いつも私の傍には私のことを想ってくれてる人がいるのに、そんなことにも気付かないで…
「ごめんね、風子…それにありがとう。
すいぶん飛んでったよ、心の中の邪魔なもの…」
空に向かってそう話したら、穏やかな風が私の傍をさーっと吹き抜けた。
〜fin.
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