「美穂…一体、どうしたんだ!?」

「うん…年賀はがきがね…」

「年賀はがき?」

「うん、出すの忘れてて…
今から出したんじゃ元日には届かないし、元日に届かなかったら、お父さん、また怒るだろうなって思って…
だから、配達に来た。」

父さんがどんな反応をするだろうって、心の中は今にも弾けそうに張りつめていたけれど、私は全神経を使って平静を装いそう言った。
すると、お父さんの表情が急に緩んで……



「とにかく早く入りなさい。
寒かっただろ。」

「うん、こっちはやっぱり寒いね。」

お父さんの言葉に、ほっとして思わずこぼれそうになった涙をぐっと堪えた。



「美穂…お腹はすいてないのか?」

「え…うん、なにかある?」

「なんでもあるぞ。
ちょっと待ってろ。」

「え!?お、お父さんが作ってくれるの?」

驚いてそう言うと、お父さんはどこか照れたような顔で微笑み、小さく頷いた。
それは、私が今まで見たことのないような優しい顔だった。



(今夜ならきっと素直に謝れる……)

父さんのその顔を見た時、私はそう感じた。



〜fin.


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