「もうっ!いちいちうるさいわね!
でも、あんた言ったじゃない。
あれは人間が書いた童話みたいなものなんだって。」

『あぁ、そうだとも。
元々は聖ニコラスの訪問という詩みたいなものが発端だな。
そこには8頭のとなかいがひくそりに乗って、サンタクロースが子供達にプレゼントを配りに来る様子が描かれている。
さらにそれが少し形を変え、クリスマスの前の夜と言う児童書になって、欧米に広まったんだ。』

「そこに赤鼻のとなかいが出てくるわけなんだ!」

私がそう言うと、となかいはゆっくりと首を振った。



『そうじゃない。
それから何十年も経った頃、アメリカのあるデパートのコピーライターが、その物語を元にして新たな物語を作ったんだ。
そこに登場するのが赤い鼻のとなかい、ルドルフだ。
このとなかいは、最初はデパートのクリスマス商戦用に作られたキャラクターだったんだ。
多分、その当時はたいした設定もそうはなくて、けっこういいかげんに作られたんじゃないかと思う。』

「クリスマス商戦用とはいえ、となかいはキャラにするにはもうひとつ地味よね。
……あんまり可愛くもないし。」

『なんだと!となかいはオスにもメスにもこんな立派な角があるんだぞ!
地味とは何だ、地味とは!』

「わ、わかったって。
はいはい、となかいは角が立派で素敵ですよ。
はいはい。
……でも、なんでわざわざ鼻を赤くしたんだろう?
もしかして、酔っ払いキャラとか…??」

『……酔っ払いキャラでは人気が出ないだろう……』

となかいはそう言うと、哀れみのこもった視線で私をみつめ、わざとらしい溜息を吐き出した。


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