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「……雪美、聞いてる?」

「あ、うんうん!
聞いてる!聞いてる!
うんうん、やっぱりクリスマスにはプレゼントは付きものよね!
……でも、何あげたら良いかなぁ?」

「う〜ん、そうねぇ…
架月はあんまりアクセサリーはつけないからねぇ…
そうだ、明日、私も一緒に探してあげるよ!」

私は、愛香との待ち合わせの前に美容院に向った。
今日はバイトは休んでるはずだから、あの場所に架月がいるはずはないのだけど、念のため、このまえとは違うライブハウス近くの美容院を予約した。
それだけじゃない。
今回は髪だけじゃなく、メイクまで予約したんだから。



「これが、私…?」

奮発した甲斐があった。
さすがに、プロの技は違う。
鏡に映る私の姿は、よそ行きの髪型にぴったりな、よそ行きの顔になっていた。



「お待たせ…!」

「ええ〜〜っっ?
雪美?!どうしたの?
今日は、すっごく可愛いよ!いつもとは別人みたい!」

愛香の言葉は本心のようだ。
目を丸くして、私の姿を上から下、下から上と何度もみつめている。

いつもは派手な愛香の引き立て役にもならないような自分だけど、今日だけは勝ったような気すらする。
ここに来るまでの間にも、何度か若い男性の視線を感じた。
いつもは空気みたいに誰にも注目してもらえないのに…



(私、今日はそんなに変わってる…?!)

なんだかすっごく良い気分…!



「雪美、もしかしてプチ整形とかしたの?」

「やってないって!
実は、今日は美容院でメイクをやってもらったんだ〜」

「そうなの?!さすがにプロだね。
こんなに変われるんだったら、私もやってもらえば良かった。」

「あいちゃんは、元が良いんだからそんな必要ないよ。」



確かに、愛香は私よりは可愛いけど、とんでもなく美人っていう程ではない。
でも、今日の私は余裕でそんなお世辞をすらすらと口にすることが出来た。

私の気持ちとは裏腹に、愛香の機嫌はあまり良くないようだった。
それは、きっと、私のせいだ。
女はどんなに仲がよくても常にライバルなのだから…
つまり、今日の私はそれだけイケてるってこと…!
そう思うと、ますます頬が綻んでしまう。



私達は架月へのプレゼントを探し始めたけど、愛香の方はまるで気持ちが入っていなかった。
私がどれを手にとっても「それで良いんじゃない?」と言うばかり。



「あ!これ、可愛い!
しかも、半額になってる!
ねぇねぇ、ちょっと試着してみて良い?」

ついに愛香は架月へのプレゼントではなく自分の服を選び始めた。


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