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「ばあさんや…また、瓦版に桃太郎のことが載っておるぞ…」
「桃太郎…」
お爺さんとお婆さんは、瓦版を見て、そっと涙を流しました。
【桃太郎一味、庄屋の宝を根こそぎ強奪!】
「桃太郎…なぜ、こんなことに…」
***
「おらおらおら!
抵抗すると、絞め殺しちまうぞ!」
「逆らうと、血ィみるどーーー!」
生地とイスは部屋の片隅で震える者達に向かって、すごみをきかせます。
その後ろから堂々と現れた桃太郎は、ゆっくりとその者達を見下ろしました。
「我々が欲しいのは宝だ。
命まで取ろうとはいわん。
……しかし、抵抗すればその時は…」
桃太郎は刀を抜いて身をかがめ、その刃先を主人の頬にぴたぴたと押し当てました。
「ひぃーーーー!」
「では、金庫を開けてもらおうか…」
「は、はいっ!」
*
「か〜ぐや〜ちゃ〜ん!
またお宝持って来たよ〜!」
「ふふふ、桃ちゃんは本当によく働いてくれるわね。
やっぱり、結婚するのはあなたにしようかなぁ…」
かぐやが上目遣いで桃太郎をみつめます。
「か、か、かぐやちゃん!
そ、それ、本当!?」
「そうねぇ…でも、赤鬼の権座衛門もよくやってるし…
どっしようかなぁ…」
かぐやは人差し指をあごにあて、小首をかしげて桃太郎をみつめました。
「い、今からまたお宝取りに行って来るよ!」
かぐやのおもわせぶりな視線に、桃太郎はすっかり骨抜きです。
今、戻って来たばかりだというのに、桃太郎はイスと生地を連れて再び駆け出して行きました。
役立たずと皆から罵られるうちに、ザルはいつの間にか姿を消していました。
ザルが今どこにいるのかを知る者も気にかける者もいませんでした。
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