「獣人は人間よりも数がずっと少なかったから、きっと太刀打ち出来なかったんだな。
そのせいで、獣人の数はさらに激減してしまった。
やがて、時は流れ、そんなことをするのは間違いだと人間達もやっと気付いたが、その頃には獣人と人間の間にはどうしようもない程の深い溝が出来ていた。
獣人は特定の場所に潜み、そこでひっそりと暮らしている。
そこに近付きさえしなければ何も起こらないが、うかつに近付こうものなら、獣人の餌食にされてしまう…
そうされても仕方のないことを人間達はやって来たんだもんな。
獣人は人間よりも体格が良いし、鋭い爪や牙を持つ者も多い。
本来は人間よりもずっと強いんだ。
奴らの方が数が多ければ、きっと立場は逆だったと思うぜ。」

「そんな……」

エリオットは自分の思い描いていたものとはあまりに違う獣人の現状に動揺し、言葉を失った。



「……セリナがこっちに引き寄せられ、そしてこの先には獣人達の住む村があるということは…
願いの石は獣人が持っているということか…」

その言葉に、四人は一斉にダルシャの顔をみつめる。



「そ、そうとは限らないんじゃないか?
山のどこかにあって、獣人の村にさえ近寄らなければなんとかなるんじゃ…」

それが、フレイザーの願望であることは言った本人にもわかっていた。
確証があるわけではなかったが、なぜかフレイザーも心の底ではダルシャの言うことが正しいように感じていたのだ。



「……どうする?
山に行くのをやめるか、危険を覚悟で行くか…」

「ねぇ…
魔の山の噂みたいに、本当は獣人達もエルフみたいに優しい人だってことはないかな?」

「エルフと人間達は仲が良いとは言えないまでも、戦いを起こした事はない。
エリオット…おまえは、何も悪いことをしていないのに、仲間を酷い目に遭わせたり殺したりした奴らと仲良く出来るか?」

「それは……」

「考えてもみろよ。
万一、ダルシャの言うように、願い石が獣人達の村にあったとするぞ。
それを獣人達が素直に渡してくれると思うか?
そんなわけないよな。
じゃあ、どうする?
力づくで奪い取るのか?
昔の人間達みたいに、また獣人を傷付けるのか?」

エリオットが何も答えられないでいる時、フレイザーが手を叩き声をあげた。



「いや、願いの石は獣人の所にはない!
あの山のどこかにあるんだ!」

「フレイザー、なんでそんなことがわかるんだ?」

フレイザーは口端をあげ、片目を閉じて自慢げに微笑んだ。


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