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「いや、そういうわけでは……」

ジュリアスは、歯切れの悪い言葉を返した。



「フーリシアで出会ったのは、迷いの森と呼ばれる森で、君と同じように一人で暮らしている獣人だ。
名はカインという……」

「そ、そうか……」

「誰か知り合いでも……」

「あ、あんたらは願い石を探してるんだったな。
あんた…すまないが、そこの戸棚の引き出しを引っ張り出して、その奥に隠してある木箱を持って来てくれ。」

ジュリアスは、まだ身体が動かし辛いのか、ラスターに用事を言いつけた。



「ちょっと待ってくれよ。
……この引き出しか?」

「そうだ。」

言われた通り、引き出しの奥から木箱をみつけたラスターは、それをジュリアスの前に運んだ。



「ありがとう。」

ジュリアスは、木箱についたほこりを手で払いのけ、その蓋を押し開けた。



「あっ!!」



ダルシャ達の視線が、一斉に箱の中に釘付けとなった。
なぜなら、そこにあったのは、赤い願い石だったのだから。



「ジュリアス、これは……」

「がっかりさせて悪いんだが、こいつは双子石だ。
だから、何の価値もない。」

「そうか…これは双子石……」

ペルージャにある石が双子石であることを予想していたエリオットは、がっかりどころか、とても興奮していた。

この赤い石に願いの解除を申し出れば、すぐにでも元の世界に戻れるのだから…



「そんなもんでよければ、あんたにやるよ。
酷い怪我をさせてしまったお詫びの印だ。」

「本当に良いのか?」

ジュリアスは深く頷く。



「ありがとう、ジュリアス。
感謝する。」

「これでもう俺に用はないな。
ただ、今からじゃあ戻るのも大変だ。
良かったら、今夜はここに泊まって行くと良い。」

「それは助かるよ。ありがとう。
それから…君に提案があるんだが……」

「提案?……なんだ?」

「君も一人でこんな所に暮らすのは不便だし心細いだろう?
私達が、責任を持って君を連れて行くから、他の獣人達と一緒に暮らさないか?」

ダルシャの言葉に、ジュリアスの表情がみるみるうちに強張ったものに変わっていった。


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