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「大丈夫?痛い所はない?」

「あぁ、大丈夫だ。」



ラスター達は、痺れて身体の動かない獣人を抱えて家の中に運んだ。
横になって休んでいた獣人は、しばらくすると話がしたいと言って起き出した。




「すまなかったな。」

「こっちこそ、すまなかった。」

長椅子に腰かけた獣人は、まだ痛々しく血のにじむダルシャの手に目を遣った。



「こんなもの、じきに治る……
それに私が勝手にやったことだ。
気にしないでくれ。
そんなことより…今更、なんだが……私はダルシャ、そして、こっちはラスター…エリオットだ。
君の名は?」

「え…お、俺は、ジュリアスだ。
それで…あんたらは何の用でここに来たんだ?
町の者に頼まれたのか?俺を始末するようにって……」

「違うよ!……あ。」

大きな声をあげたエリオットは、すぐに我に返り、気まずそうに俯いた。



「考えてもみろよ。
始末するつもりなら、エリオットはあんな手加減はしない。
あんたを黒焦げにしてしまうさ。
それに、こっちのお兄さんも剣の腕は確かなんだ。
あんたを殺そうと思ったら、簡単に出来たと思うぜ。」

「では。なぜだ。
俺を仕留めるのが目的じゃないのなら、なんでこんな所まで来たんだ!?」

「君に訊ねたいことがあったんだ。
実は、私達は事情があって、願い石を探す旅をしている。
ノーランシアで、君のことを訊きこみ、それで……」

「願い石?そんなもののためにここまで来たっていうのか?
獣人に会えば、命を失うかもしれないのに!?」

ジュリアスは、呆れた様子で目を見開き首を左右に振る。



「こちらもいろいろと訳ありでね。
それに……私達は今までにも獣人と出会ったことがある。
獣人には恐怖よりも親しみを感じているんだ。」

「獣人と…!?
どこの獣人だ?」

ジュリアスは身を乗り出し、酷く興奮した様子でダルシャをみつめた。




「どこって……イグラシアや…」

「フーリシアの獣人は!?」

「フーリシアでも会ったが……」

「フーリシアのどこだ!?」

「……ジュリアス…君はフーリシアの獣人と知り合いなのか?」

ジュリアスはその問いかけにはっとした様子で、長椅子に深く腰掛直して俯いた。


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