19


獣人とダルシャの激しい戦闘が続き…二人だけではなく、ただそれを見守っていたラスター達もが汗にまみれ、疲労していた。



「ど、どうか…どうか、信じてくれ。私は……」

「お、俺はもう騙されない!
なら、なぜ仲間を連れて来た!?それに、おまえの腰にあるものはなんだ!」

はっとした様子で、ダルシャは腰の剣を抜いて投げ捨てた。
獣人は素早くそれを拾い上げる。



「ダルシャ、危ないっ!!」

獣人の剣が風を切りながら、ダルシャ向かって振り下ろされる。



「あ…あぁっ!」

身を交わすうち、突き出ていた石につまずきダルシャはその場に倒れこんだ。



「これでおしまいだ!」

ダルシャの前に立ちはだかった獣人は、空高くダルシャの剣を振りかざす。



「だ、だめーーーー!」



一際大きなエリオットの声があたりに響き渡ったと同時に、目もくらむ閃光が空を駆け、ダルシャの剣を貫いた。
獣人は大きな叫び声をあげ、そのままばったりと前のめりに倒れこむ。



「だ、大丈夫か!」

ダルシャが身体を揺さぶると、獣人はうっすらと目を開けた。



「魔法使いだったとは…汚い真似を……」

「ご、ごめんね。獣人さん。
でも、痺れはしばらくしたら消えるから……」

「俺をどうするつもりだ!
なぜ、止めを刺さない!?
おまえたちに好きにされるくらいなら、この舌を噛み切って……」

「あーーーーっ!!」



獣人の口の中にダルシャの繊細な手が差し込まれ、その手は獣人の牙に深く噛みしだかれ、流れ出した赤い血に染められた。



「ダルシャ!やめろ!
手を食いちぎられるぞ!」

ダルシャの顔は苦痛に歪んでいたが、それでもダルシャは首を振る。



「君は死んではならない。
私のこの手なぞ、君の命に比べたらなんでもないさ。」

無理に作られた笑顔は、不自然なものだったが、その気障な言葉に嘘がないことをエリオットやラスターは信じていた。


- 680 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

トップ 章トップ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -