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獣人とダルシャの激しい戦闘が続き…二人だけではなく、ただそれを見守っていたラスター達もが汗にまみれ、疲労していた。
「ど、どうか…どうか、信じてくれ。私は……」
「お、俺はもう騙されない!
なら、なぜ仲間を連れて来た!?それに、おまえの腰にあるものはなんだ!」
はっとした様子で、ダルシャは腰の剣を抜いて投げ捨てた。
獣人は素早くそれを拾い上げる。
「ダルシャ、危ないっ!!」
獣人の剣が風を切りながら、ダルシャ向かって振り下ろされる。
「あ…あぁっ!」
身を交わすうち、突き出ていた石につまずきダルシャはその場に倒れこんだ。
「これでおしまいだ!」
ダルシャの前に立ちはだかった獣人は、空高くダルシャの剣を振りかざす。
「だ、だめーーーー!」
一際大きなエリオットの声があたりに響き渡ったと同時に、目もくらむ閃光が空を駆け、ダルシャの剣を貫いた。
獣人は大きな叫び声をあげ、そのままばったりと前のめりに倒れこむ。
「だ、大丈夫か!」
ダルシャが身体を揺さぶると、獣人はうっすらと目を開けた。
「魔法使いだったとは…汚い真似を……」
「ご、ごめんね。獣人さん。
でも、痺れはしばらくしたら消えるから……」
「俺をどうするつもりだ!
なぜ、止めを刺さない!?
おまえたちに好きにされるくらいなら、この舌を噛み切って……」
「あーーーーっ!!」
獣人の口の中にダルシャの繊細な手が差し込まれ、その手は獣人の牙に深く噛みしだかれ、流れ出した赤い血に染められた。
「ダルシャ!やめろ!
手を食いちぎられるぞ!」
ダルシャの顔は苦痛に歪んでいたが、それでもダルシャは首を振る。
「君は死んではならない。
私のこの手なぞ、君の命に比べたらなんでもないさ。」
無理に作られた笑顔は、不自然なものだったが、その気障な言葉に嘘がないことをエリオットやラスターは信じていた。
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