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「どうにか越えたようだな…」
次の日の昼近くになって、五人はようやく魔の山を越える事が出来た。
「そうだ、エリオット、何でも良いから、何か魔法を使ってみろよ。」
「あ、そうか!もう魔の山を抜けたから、魔法が使える筈だよね?」
エリオットは笑顔でそう言うと、ぶつぶつと呪文を唱え、手に持った杖を高く差し上げた。
それと同時に、閃光と共に大きな雷鳴が轟き、皆の耳をつんざいた。
ふと見ると、近くの木がまっぷたつに割れ、そこから焦げ臭いにおいと黒い煙が立ち上っている。
「……エリオット…やり過ぎだ…」
フレイザーのその言葉に、エリオットは肩をすくめた。
「エリオット、君の魔法はたいしたものだな!
この分なら、この先、強い魔物が出て来ても心配ないな。」
「でも、魔の山程、魔物が出て来る所はこの先もあんまりなさそうだけどな…」
「それもそうだな…」
他愛ない会話で皆が談笑する中、ラスターだけは浮かない顔をしていた。
昨夜以来、彼の様子はどこかいつもとは違っている。
「……ねぇ、フレイザー…
ラスター、元気ないね。」
エリオットが少し背伸びをしながら、フレイザーの耳元で囁いた。
「そうだな…詳しいことはわからないが、きっと奴と母親の間にはなにかあったんだろうな…」
「僕、ラスターに謝った方が良いかな?」
「やめておけ…却って、話を蒸し返すことになる。
なぁに、奴もそのうち元気になるさ。
……ただ、これからは、家族の話はやめといた方が良いな。」
「そうだね、わかった。そうするよ。」
五人は、押し黙るラスターを先頭に、ロンダリンの町を目指し歩き始めた。
ロンダリンまでには、地図にその名さえ記されていない小さな町や村がいくつか点在しているようだ。
「なぁ、ラスター、とりあえず、この先の町で一休みしよう。」
ラスターはかけられた声に後ろも振り返らず、首だけで頷いて見せた。
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