「セリナさんっていうのは、あなたですね?」

「え…えぇ……」

「セリナに何か用でもあるのか!?」

セリナに近付いてきた船員を警戒するように、ラスターが前に立ちはだかった。



「あ…あの…レオナルドさんからお手紙をお預かりしてまして……」

「レオナルドだぁ?そんな奴、知らないぞ!
なぁ、セリナも知らないだろ?」

「え……えぇ。」

「……おまえ、まさかぁ……」

今にも飛びかからんばかりの険しい形相でにらみつけるラスターに、船員は怯えたようにそっと後ずさりする。



「私は、本当にお手紙を……」

「どれどれ……」

船員が懐から取り出した封筒を、ダルシャが長い指でつまみ取った。



「セリナ……私が確認しよう。
良いかね?」

小さく頷くセリナに、ダルシャも同じように頷き返した。




「では……」

慌ててその場を離れた船員には誰も気にすることなく、皆の視線は、何も書かれていない簡素な封筒に注がれていた。
皆がみつめる中で、ダルシャは指で封を切る。



「……おぉ。」

二つに折られた紙切れを開き、そこに目を落とすダルシャが小さな声を漏らした。




「みんな、心配することはない。
これはあの老人からの手紙だ。
……護り人のな。」

「あ…そういえば、あのじいさんの名前…聞かなかったな。
そっか、あの爺さん、レオナルドっていうのか。」

ラスターは、そう言ってようやく肩の力を抜いた。



「で、ダルシャ…護り人が何を?」

「あぁ、特にたいした用でもない。
なんでも、ノーランシアの知り合いが、このところずっと音信不通なんだそうだ。
だから、もし時間があれば、その人が元気でいるかどうか確かめてほしいと……この前は、我々が早々に退散したから、話せなかったんだな。」

「……そりゃあそうだろ。
あんな話を聞かされたんだからな。」

ラスターはそう言うと、また不機嫌な顔に戻った。



「彼は、そのことを私達に頼もうと思いつき、港に来たものの、すでに、私達は船に乗り込んだ後だったんだな。
だから、咄嗟に手紙を書いて、船員に言付けたようだ。」

「それで、知り合いの住所はわかってんのか?」

「あぁ、しっかりと書いてある。」

「ま、暇があったら……だな。」

興味なさ気にそう言い捨てたラスターは、そのままその場を離れて行った。


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