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「……なにか良いことでもあったのか?」

「な、なんでだ?」

「なんでって……今日は、なんとなく機嫌が良いみたいだからさ。
……皆に話してすっきりしたか?」

フレイザーのその問いにジャックは躊躇いがちに頷いた。



「世間じゃとてもこんな風にいかないことはもちろんわかってる。
……だけど……今までずっとずっと心に抱え込んでた悩みが、ずいぶんと軽くなった。
少なくともこの世界で五人は、俺が獣人の子だからっていってそのことで態度を変えることがないんだってわかったら……
ものすごく気持ちが救われた。」

ジャックの今までに見たことのないような穏やかな表情に、フレイザーも気持ちが和むのを感じた。



「……そうか、良かったな。
でも、五人だけじゃないぞ。
今まで旅先で知り合った人達は同じだと思う。」

「たとえば、サンドラばあさんとか?」

「そうだな、あのおばあさんもそうだろうな。」

「ばあさんも、俺と似たようなもんだもんな。
……ばあさんの娘の話をエリオットから聞いた時は、俺、実はすごくショックだったんだ。
だって、あのばあさんには魔法使いの能力は受け継がれてなくて、その娘も同じで……それなのに、魔法使いの血が流れてるってだけで結婚を断るなんてな……
ばあさんだって、娘だって何も悪くないのに、なんでそんなことで差別されなきゃならないんだろう……第一、魔法使いだって何も悪くないじゃないか。
寿命が人間より長いとか、魔法が使えるのは魔法使いのせいじゃないよな。」

「……ジャック……
だから…………まぁ、世間にはおかしな奴が多いってことだよな。」

フレイザーは言いかけたことばを飲みこみ、話を摩り替えた。



(獣人だって同じことだなんて言ったら、また怒るよな。
今日は言わないでおこう。)



「明日からは馬車の旅だな。
出発は早いから、今夜も早めに寝ておけよ。」

「あぁ、そうするよ。」



(ジャックと仲良くって……一体、どうすりゃ良いんだろう?
情け無いけど今まで彼女なんていたことなかったから、何もわからない……
……そうだ!明日、ダルシャに相談してみよう!)




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