「では、そろそろ私達も行くとするか。」

「リュシーさんはどうするの?」

「仕方がない。
いずれ、手紙でも書く事にするさ。」

「残念だわ。お会いしてから発ちたかったのに。」

「またいつでも会いに来られるさ。」

四人は、やって来た乗合馬車に乗り込んだ。
大陸の反対側の港に向かうために。

フレイザーより一足先にスエルシアに渡り、願い石についての情報を探す手筈になっている。
今回は奇跡とも思えるほど簡単にみつけることが出来たが、次もそうだとは限らない…いや、おそらく今回のようなことにはならないだろうから。







「あったぞ!この部屋じゃな。」

「ふーっ、やっと着いたか。」

鍵を開け、船室の中に入ると、フレイザーはトランクの蓋を開けた。



「あぁ〜、暑い!!
死ぬかと思ったぜ!」

大きな身体を折り畳むようにしてトランクの中に押し込められていたカインが、狭いその場所から身を乗り出した。



「お疲れ様。
イグラシアに着くまではしばらく入らなくてすむから安心してくれ。」

「当たり前だ。
こんなとこに長く閉じ込められたんじゃ、村に着く前に死んじまう。」

カインは、思いっきり腕を伸ばして大きく伸びをした。



「見ろよ、カイン、海だぜ!」

「海……?」

船室の丸い窓から外の景色をのぞいたカインは、目を見開き何も言えないでいた。
その隣には、カインと同じように初めて見る大海原に感動するダグラスがいた。



「これが海か…」

「退屈だろうけど、なぁに、一週間の辛抱だ。」

「退屈なもんか…こんなの見るのは初めてだからな。
見飽きることはないと思うぜ。
……だけど、俺……今でも、信じられないよ。」

その時、不意にかちゃりという小さな音を立てて、船室のノブが回った。
フレイザーは鍵をかけなかったうかつさを悔やんだがもう遅い。
反射的にフレイザーは剣の柄に手をかけ、カインは鋭い牙をむいて低い唸り声を上げた。
それと同時に、扉の向こう側から美しい女性が顔をのぞかせた。


- 110 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

トップ 章トップ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -