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「そ、それは、本当に本当なのか?」

「あぁ、もちろんだ。」

ダルシャの話を聞いたカインは、それでもまだ信じられない様子だった。
左右に首を捻りながら、部屋の中を落ちつきなく歩き始めた。



「カイン、急がせて悪いのだが、船の都合があるんだ。
なんとか今夜中に発ちたいのだが…」

「こ、今夜中!?」

ダルシャの言葉にカインはさらに落ちつきをなくした。



「手伝うことがあったら言ってくれ。
荷物は少ない方が助かるのだが…」

「いや……荷物はそんなにないんだ…
……すまないが、ちょっと出てくる。」

カインはそう言い残して家の外へ飛び出した。



「カイン、どこまで行ったんだろうね。」

「まさか、行くのがいやになって逃げ出したんじゃないだろうな?」

「まさか……!」

そんな会話を交わしていると、ちょうどカインが戻ってきた。



「待たせてすまなかったな。」
すぐに準備するからな。」

家を出る時とはどこか表情の変わったカインはそういうと、てきぱきと準備に取りかかり、あっという間に小さな荷物をまとめた。



「じゃあ、行こうか。」

「それだけで良いのか?」

「あぁ、これで十分だ。」

カインの微笑みはとても清清しいものだった。



「よし、それでは出発だ。
カイン、念のため、これを…」

ダルシャは、カインに黒い頭巾をすっぽりとかぶせ、一行は闇に乗じて港に向かって歩き出した。







「それじゃあ、フレイザー、頼んだぞ。」

「あぁ、まかせといてくれ。」

ダルシャと大きなトランクを引きずるフレイザーはタラップの前で堅い握手を交わした。



「それにしても、リュシーさん、遅いな。」

「こんな日に寝坊はしないと思うのだが…」

船が出る時間になっても見送りに行くと言っていたリュシーの姿は見えない。
やがて、出航を知らせるベルが鳴り響いた。



「あぁ、リュシーさんったら、どうしたんだろう?」

「もう船が出るっていうのに…」

結局、リュシーは見送りには間に合わず、船はゆっくりと港を離れた。
港に残った四人は、船影が小さくなるまで手を振り続けた。


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