「ダグラスさん、道案内、どうもありがとうございました。」

「何を言う。
わしもついていくぞ!」

思いがけないダグラスの言葉に、ダルシャは目を丸くした。



「ダグラスさん、この先には強暴な魔物がいるとおっしゃったのはあなたですよ。」

「だが、あんたとあの嬢ちゃんがいたら、どんな魔物が出てこようとも絶対に大丈夫だとあの子が言ったぞ。」

ダグラスはラスターをあごで指し示した。



「そ、それはそうですが、万一ということが…」

「わしはもう決めたんじゃ!
子供の頃からずっと見たかったんじゃが、今までその機会に恵まれなかった。
こんなチャンスを不意にしてなるものか。」

「願い石なら、取って来てからちゃんとお見せしますよ!」

「いや、魔物の森にどんな魔物がおるのかも見てみたい。
どんな場所なのかも見ておきたいんじゃ!」

「しかし、ダグラスさん…」

「わしは結局結婚する事もなかった。
両親はとうの昔に亡くなり、わしももうこの年じゃ。
何事か起こっても思い残す事など、何もありゃせんのじゃ。
じゃが、ここで、引き返したりしたら、それこそそれが一生の悔いになる。
頼む、年よりの最後の望みだと思ってきいてくれ…」

ダグラスは両手をくみ、すがるような視線でダルシャをみつめる。
それでも、ダルシャはまだ心を決め兼ねていた。



「良いじゃないか、ダルシャ。
ダグラスさんのことは、俺が命懸けで守るからさ。」

フレイザーが、ダルシャの肩をぽんと叩く。



「おお、本当か!ありがとう!」

ダグラスは、フレイザーの手を握り締め顔をほころばせた。



「爺さん、そいつは見掛けによらず力はないから、守ってもらえるなんて思うなよ。
自分の身は自分で守ることだな。」

ラスターの言葉に、フレイザーは顔をしかめ舌打ちをする。



「では、ダグラスさん、くれぐれも無茶はなさらないで下さいね。
フレイザー、ダグラスさんのことは頼んだぞ!」

「えっ!?あ、あぁ、もちろんだ!」

ダルシャに信頼されたことで、フレイザーの瞳はその輝きを増した。



「よし、それでは今から突入するぞ。
皆、気を引き締めていくんだぞ!」

ダルシャの気合いのこもった声に、全員が深く頷いた。


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