6
「それにしてもすごい苦さだったなぁ…」
しばらくすると、フレイザーの頭痛は嘘のように治っていた。
「でも、効き目は確かでしょう?」
「まぁ、それはそうだけど…」
フレイザーは、少し冷めたくなった肉料理を頬張った。
「君があれほど酒に弱いとは知らなかった。
無理にすすめて悪かったな。」
「いや、最近しばらく飲まなかったからたまたまああなっただけだ。
普段ならあのくらいなんでもない。」
「以前は飲めたというのか?
……でも、君は昔のことは記憶がないんだろう?」
「そ、それはそうだけど、なんかそんな気がするんだ。」
必死で取り繕うフレイザーを見ながら、エリオットは肩をすくめる。
「それはそうと、リュシー叔母様、このあたりに魔物の森っていうのがあるって聞いたんだけど…」
「魔物の…ええ、ありますよ。
魔物の森がどうかしましたか?」
リュシーは、ダルシャに視線を移し、意味ありげな微笑を浮かべた。
「実は……」
話しかけたエリオットは、ダルシャに確認を取るように彼の顔を見る。
「叔母様…実は私達は願い石を探して旅をしてるんです。」
ダルシャはエリオットに答える代わりに、自分で話し始めた。
「願い石って、あの願い石のこと…!?」
「そうです。」
ダルシャは、セリナが石の巫女であることや、彼女の母親の危機のこと、エリオットやフレイザーは記憶をなくしていること、そして、この近くに願い石があることなどを簡潔に話した。
「まぁ、そんなことが…」
「あと、もう一人、仲間がいるんだけど、そいつの願いは特にたいしたことはないんだ。」
「その方は、どうして一緒に来られなかったの?」
「え…?あぁ…あ、そいつはちょっと人見知りするやつなんだよ。
それに、石がこのあたりにあることを知らなかったから、ここには来なかったんだ。」
「そうだったの…
あら?でも、あなたはどうして…」
リュシーが、不思議そうな顔でダルシャをみつめる。
- 89 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
トップ 章トップ