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ルイジ吉田。愛称はジーノ、若しくは王子。ETUに所属するサッカー選手でポジションはMF、背番号は10番。
私は今この男の家に住んでいる…。




今から2週間くらい前、嬉しいことに今までの働きが認められて、地方の支店から東京の本社へ配属が決まった。だけど重大な問題が一つあった。「家」だ。

本社は東京の一等地にあり、その周辺ではマンションなどの相場も高く、私の給料ではとてもじゃないが借りれない。郊外なら少しは安くなるだろうが、その場合通勤は電車になる。（本当は車で通勤したいが、渋滞に巻き込まれたら確実にまずい）
だが私はいわゆる『車社会』で育ったので、日頃から電車に乗る機会があまりなく、なんとなく電車苦手だった。（ラッシュなんてとてもじゃないが無理だ）だからできれば歩きか自転車で通勤出来る範囲に住みたかった。
両親にどうにかやりくりしてもらえたら良かったが、私の両親は数年前事故で他界しており、残してもらった遺産も生活費やら何やらでほとんど使いきってしまった。年金暮らしの祖父母たちに頼むのも申し訳ない。
長い間悩んだ結果、私は叔母に相談した。叔母は会社を持っており、人懐っこい性格からか顔も広く、いい物件を紹介してくれるのではないかと思ったからだ。
叔母は快く了承してくれ、私に一つの物件を紹介してくれた。
本社まで歩いて10分もかからない高級マンション。そう、ここだ。




「佳奈の会社まで歩いて10分もかからないわ。まぁ住み込みって言う形になっちゃうけど」


あ、彼がここの主のジーノよ。と叔母は彼を紹介した。
私はその顔に見覚えがあった。東京に住んでいる友人がことあるごとに言っていた、ETU━━East Tokyo Unitedの10番王子の愛称で呼ばれるルイジ吉田その人だった。
実を言うと私は彼のキザでナルシストなところがちょっと苦手だった。苦手意識を持っている人と同居なんて出来るんだろうかと思いつつも、内心この申し出は嬉しかったし、ありがたかった。だがここで新たな問題が浮上した。



よく知らない男と同居ってどうなの



いやまあよく知らないって言ってもちょっとは知っているんだけれども（友人のおかげで）。ていうか吉田さん彼女いないのか？いたとして、彼女は見ず知らずの女が彼氏の家に泊まることに対して何も思わないのか？


疑問に思っていることが相手に伝わったのか、吉田さんは素晴らしい笑顔でこういいのけた。



「あぁ大丈夫。君は僕のタイプからかけ離れているからね！」



私の中の彼の評価はこの一言で地獄の底まで落ちた。



くたばれこの下睫毛野郎。




「佳奈ー、ご飯まだかーい？」


「…すいませんあとちょっとです」

家賃は家事全般になりました。





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