君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



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「やだジーノったら…」

「女性に優しくするのは男として当然さ」



リビングからは美男美女の優雅な談笑が聞こえてくる。美女は勿論吉田さん(ジーノか王子と呼ぶように言われたけど、何だか癪に障るので、心の中では吉田さんと呼ぶことにした)の彼女だ。…多分。というのも、私がこの家に来てから吉田さんが連れてきた女性は彼女で3人目だ。共通点はモデル並みに足長い、スレンダー、乳がでかい。まあ顔がいいのは当たり前か。(と納得してしまうのが何か悔しい)一週間のペースでコロコロ変わる。今いる彼女も、以前来た女性たちも、私を見るなり口の端を上につり上げ(ここが何ともむかつく)吉田さんの腕にこれ見よがしにしがみつき、「ねぇジーノ、早く行きましょ」と甘ったるい声でリビングへ誘う。入る前に、勝ち誇った顔で私を見るのを忘れずに。




あれか。喧嘩売られてるのか私は。



口論なら大得意だ。殴り合いは大の苦手だが。しかし一応居候の身としては家主のプライベートにいちゃもんはつけられない。彼女が家にくる時、事前に伝えてくれる所だけが唯一の救いだ。
はぁと溜め息をつき、途中だった洗い物に手を付けた。





洗い物も終わり、さあ仕事をしようと意気込んだ矢先、2人がリビングからでてきた。うわなんてタイミングだ。リビングには食器が残ったままだろう。終わったばかりの洗い物を再びしなければならなくなりげんなりとしている私にはお構いなしに、2人は薄暗い吉田さんの部屋へ入っていった。あーやるのか。最悪なことがダブルパンチでやって来た。ほんと私に遠慮するとか全然無いな。私は鞄の中からウォークマンを取り出し、音量を耳が痛くならない程度で最大上げ、イヤフォンを耳につけた。そうでもしないと聞きたくも無い声が否応無く聞こえてくる。女の喘ぎ声を聞いたって嬉しくない。それでも稀に聞こえてくる声に眉を寄せながらリビングの片付けに向かった。




選択を誤った ?




せめて私がいないときにやってくれないもんかね。







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