君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



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食堂につくとそこにはファブレ公爵と夫人、それにヴァンがいた。


「おはようございます、父上、母上、ヴァン謡将」


在り来たりな挨拶を言い席に着く。淹れてもらった紅茶で一息。うん、うまい。



「元気そうで何よりだルーク」

「わざわざお気遣いありがとうございます、ヴァン謡将。記憶が一向に戻らないのは困りますが、屋敷の皆がよくしてくれるのでとても助かっています。俺はつくづく恵まれてると思う日々ですよ」


紅茶を飲みながらそう答えた。それはなによりだ、と返すヴァンの腹のうちを考えると思わず笑いそうになってしまう。
ヴァンの計画では俺はヴァンを師匠と慕い、自分しか理解者がいないと思わせる予定だったろうから、まさかの事態に内心焦っていることだろう。他人の不幸は蜜の味、正しくそれだ。何とも性格の悪い人間だな、俺は。
心の中で自嘲しながら、公爵たちの談笑をBGMに、相変わらずうまいシェフ特製の朝食をすませた。






「ルーク、いるか?」



朝食後、部屋で古代イスパニア語を練習していると、ドアの方からガイの声がした。


「ああ、入ってこいよ」


そう言うとガチャリとドアを開け、ガイが入ってきた。相変わらずのイケメンだな、うん。これで女性恐怖症なんて勿体ないなー、と考えながら「どうかしたのか?」と声を掛ける。


「いや、何してるのかと思ってさ」


笑いながら言うガイに微笑みを返した。ほんと人がいいと言うか何と言うかな…俺のこと憎いだろうに。家族の敵の息子を気にかけてやるなんてな。記憶喪失に対しての哀れみも混じってるだろうが。


「ああ、古代イスパニア語を練習してたんだ。やっとフォニック文字も書けるようになったしな。大変だけど、楽しいよ学ぶのは」



俺の机の上には分厚い本が山のように積み重なっている。特に創世暦のものが書庫にあったので、勝手に拝借してきた。まぁ後で返すしいいだろ。
ガイは一冊の本を手にとってパラパラとめくっている。眉間にシワが寄ってきた。


「なんていうか…目が痛くなってくるな」


「そうか?慣れればそんな苦でもないぞ。だいたいこれが音機関の本だったら全然苦じゃないだろ?そういうもんだよ」


そんなガイを見て笑いながら答える。ガイは確かにそうだな、と言いながら本を戻し一度大きな伸びをした。疲れているんだろう。仕事かメイドに追いかけられたか。いやむしろ両方か?


「戻るのか?」


「ああ。そろそろ仕事しないとな」


「そうか。無理するなよ」


「お前も頑張りすぎははよくないぞ。じゃあまたな」


かっこよくポーズを決め、ドアに向かうガイを見送る。パタンと音を建てしまったドアの音が、妙に部屋に響いた。







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