君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



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――俺の今の名前はルークという。ルーク・フォン・ファブレ。キムラスカ王国の公爵家の一人息子として、何不自由なく育てられた。もうすぐくる誕生日をすぎれば、見た目は13歳、実際は3歳、精神年齢は31歳になる。

厳密言うと、俺はルークではない。3年前、ヴァンに誘拐され、オリジナルルーク―今では鮮血のアッシュと呼ばれているオラクルの六神将―のレプリカとして創られた。そう。俺は今、かつていた世界に在ったゲーム、「テイルズオブジアビス」の主人公ルークとして生きている。


というのも、元の世界にいた時―まあ前世とでも言うべきか―俺は交通事故であっけなく死んだ。ただ俺は運が良いのか悪いのかは分からないが、神様という奴に魂だけこの世界に連れてこられ、このルークが創られる瞬間に居合わせた。




『お前にあの身体をやる。創られたばかりでまだ魂が無いから丁度いいしな。お前は今日からルーク・フォン・ファブレだ。お前もやったことあるだろ?そうだ、あのゲームの世界さ。だがお前の知ってる通りに物語が進むとは限らない。お前が主人公になるんだ。変えたい未来は勝手に変えろ。変えたくなければそれでも良い』


神はそう言って俺(魂)をルークの身体にいれた。いれられて、急激に意識が薄れていくのが分かった。沈みゆく意識の中、俺は神に問うた。何故俺だったんだ。
神は笑いながら言った。


『気まぐれさ。神はいつだって気まぐれで物事を決めるんだぜ』


良い人生を、という声を最後に俺の意識は完全にブラックアウトした。



それから3年たった。事が起きるのはまだ先の話。俺は前世では考えられないほどの贅沢な暮らしをして、何不自由なく生きている。


ふと空を見た。雲が無く、真っ青な空が一面に広がっていた。ああ、いい天気だな。
そんな時ドアの方からコンコンと控え目な音が聞こえた。



「おはようございます、ルーク様。朝食のご用意が整いました」


「ああ分かった。今行く」


もう一度空を見ると鳥が2羽仲睦まじく飛んでいた。その様子を少し見た後、俺はドアの方へ足を向けた。




また、今日が始まる。






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