君にありったけの愛を叫びたい | ナノ



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練習や試合を見に行っていることが吉田さんにバレてから、大っぴらに行動することにした。あとサッカーについて吉田さんに聞いたり(まともな答えはあまりないけど)、一緒に録画の試合見たり。共通の話題で話すことは滅多になかったから、少し嬉しい。



それに最近吉田さんは家に女の人を呼ばなくなった。何か心境の変化でもあったのかな。ま、いっか!





□■□■□■





−――一週間前ETUクラブハウス



相変わらずだなあバッキーは。プレッシャーに弱い。ボール空振りするし、転ぶし。あ、ザッキーとタンビーにからかわれている。



「なーに空振ってんだよ椿!」


「全くそのチキンどうにかしろよな」



「だははははー!椿ィまーたやらかしたなァ!」



クロエも一緒にバッキーをからかっている。おやバッキーが泣きそうだ。ロッカーに行って、携帯を取り出した。誰かにメールをしているようだ。バッキーにもとうとう彼女ができたのかな?何処と無く微笑ましい気持ちで見ていると、突然セリーが大きな声を出した。



「あーっ椿また佳奈さんにメールしてんのかよ〜」



見知った名前に思わず振り向いた。佳奈だって?



「え、いや、そのっ」



バッキーは顔を赤くして手をバタバタさせている。まさか…付き合っているのか?最近佳奈がサッカーに興味を持ち始めたのはバッキーと付き合い始めたから?
そう考えると心がすっと冷えた感じがした。こんな気持ち、生まれて始めてかもしれない。



「あれからスッゲー仲良くなったよなーもしかして…付き合ってるとか!」


「ち、違うっす!佳奈姉…じゃなかった佳奈さんは俺の姉ちゃんみたいな感じで…!」


「おま、佳奈さんのこと姉ちゃんって呼んでんのかよ!でも確かに恋人よりは姉弟って方がしっくりくるよなー。なあ赤崎!」



そっすね、とザッキーが応える。なんだ姉弟か。途端にホッとした。…ホッとした?何でだろう。それにホッとしても、なんだか心が晴れない。それに佳奈の笑顔がチラチラと浮かぶ。そして胸が痛くなる。なんだろう病気かなあ…。次の試合、休みたいってタッツミーに言わなくちゃ。





■□■□■□■






…最近吉田さんがおかしくなった。頭がとかじゃなくて、行動が。急に私のことをジーッと見始めたかと思うと、直ぐに目をそらしたり、ため息をつく回数も増えた。女の人は全く呼ばなくなった。試合に影響はないみたいだからいいけど…なんかあったのかな。少し心配…心配?あれ何で心配してんの?吉田さんのことあんまり好きじゃなかったのに。彼女を呼ばなくなってホッとしている自分がいる。そして何だか胸がぎゅっと締め付けられる感じがする。吉田さんの笑顔が頭にチラチラ浮かぶ。顔に熱が集まってくる感じがする。ちょ、待て待て私。もういい年なのにこんなのって…。




「ねえ佳奈ー」



「うへぇい!」




急に後ろから話しかけられて変な声で返事をしてしまった。振り向いて吉田さんを見ると顔にまた熱が集まってきた。あ、ヤバい吉田さんの顔見れない。




「い、急ぎの用事でしょうかっ」


「え、いや別にそんなことはないけど、」


「あ、じゃあちょっと買い忘れあったんで買い物行ってきます!夕飯は用意してあるんで先に食べていて下さい!じゃっ!」


「ちょ、佳奈?」



吉田さんに呼ばれたけど無視して玄関から飛び出す。エレベーターを使わずに、階段を駆け降りる。駐車場まで走って車の前でへたりと座り込んだ。



「ほんと…勘弁してよ…」



気づき始めた思い




「どうしたっていうんだ僕は…」



ジーノは真っ赤になった顔を手で隠しながら呟いた。







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