残った光を集めて掬う(1/1)

「…ここは、」



重い瞼を開けると、ボイラー室の天井が視界いっぱいに広がる
断片的な記憶をかき集めながら起き上がると隣に荒い呼吸を繰り返す名前が横たわっていた



「名前!」

「ハク、起きたか」

「何があったのでしょう、教えてください」

「何も覚えとらんのか」



そう言うと、釜爺は今起きていることを説明してくれた



「では、名前は私の代わりに死ぬかもしれないと…?!」

「千を信じるんだ。あの子も名前も、必死に頑張ってる」

「そんな…、名前、名前!」

「無駄だ、もう命が消えかけとる。さっきから何回も声をかけ続けとるが何の反応も…んん?」

「…ハク……」

「名前!」



名前がゆっくりと目を開く
どこか虚ろな瞳が私をとらえると、名前は私の裾を握った



「ハク、どこも痛くない…?苦しくない…?」

「私は大丈夫だよ、でも名前が!」

「そっかぁ…ハク、良かったぁ…」



とても辛い筈なのに、名前は私の無事を喜んで笑う
その姿に酷く胸が痛んだ



「名前、すまない、私のせいで…!」

「謝らないで…、ハクが無事で、私、とっても嬉しい…」



その言葉とともに、名前が意識を無くす
抱き起こしてその背中に腕を回すと、信じられない程の熱が伝わってきた



「いいなぁ、愛だなぁ」

「もう少しここにいても良いですか?千尋が戻ってくるまで」

「ああ、好きなだけいなさい」



釜爺にお礼を言って、名前を再び床に寝かせる
ただ千尋を信じて待つ事しか出来ない自分に、酷く腹が立った



残った光を集めて掬う
(ただひたすら奇跡を願った)
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