星空の記憶(1/1)
「へえ、昨日そんな事があったのかよ」
大湯をこすりながらリンさんが言う
「そりゃお前にそんな事言ったお姉様方が震えてる訳だ」
「どうして?」
「そんなの決まってんだろ?名前様を廊下なんかで寝かしたって聞いたらハクが黙ってねえよ」
「ハク?」
「…ああ、千は新入りだからな、覚えといた方がいいぞ。
ハクは名前様にべた惚れだから、もし名前様に何かしたらハクが黙ってねえぞ」
ま、お前に限って名前様に手ぇ出す訳ねえかとリンさんが笑う
そっか、ハクは名前が好きなんだ…
「名前は?」
「ん?」
「名前も、ハクの事好きなの?」
「好きなんじゃねえの?あの2人一緒にいる事多いし」
「ふーん」
「でも、名前様ってすげえ素敵な人だろ?あの人は俺達の希望なんだ」
「希望?」
「そうさ!ここにいる奴らはみんな名前を奪われて仕方なく働いてる奴がほとんどだし、湯婆婆は俺達のこと物みたいに扱ってくるから怯えながら仕事をしなきゃいけない
でも、名前様は違うんだ
自分の名前を持って、それでも自分の意志でここで働いてるし、その上恋もしてる!
俺達にだって平等に接してくれる
名前様みたいになりないってみんな思ってるぜ」
「うん!私も名前みたいになりたい!」
「だろぉ?」
「こら、お前達!口を動かす前に手を動かせ!」
思わず話に熱中し過ぎて兄役さんに怒られてしまう
やっぱり名前はすごい人なんだ!
そう思うのと同時に、そんな名前からただ1人愛されているハクが、少しだけ羨ましくなった
星空の記憶
(遠くて近い人)
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