きみのつくる甘い魔法(1/1)

先日の騒動以来、私は湯婆婆に1週間の強制休暇を言い渡されていた
きっと湯婆婆なりに心配してくれてるんだろうけど、それでも、ねえ?



「1週間なんて暇だわ」

「ふふ、可愛い顔が台無しだ」



帳簿のチェックをするハクの横で頬を膨らませると、ハクが片手で私の両頬を押す
ぷす、と何とも不恰好な音を立てて頬がしぼむと、ハクは私の髪を撫でながら微笑んだ



「私も湯婆婆様の意見に賛成だ。名前は少し働き過ぎだよ」

「だって、ここの仕事が好きなんだもん」

「名前は偉いね、油屋の皆にも聞かせたい」

「みんなだって頑張ってるのよ?」

「うん、でも誰もが仕事が好きだから頑張っている訳じゃない」



確かに、ここにいるみんなは湯婆婆が怖いから仕事をしてるのかもしれない
リンなんて、1週間休んでいいよなんて言われたらきっと飛び上がって喜ぶだろう



「楽しいんだけどなぁ」

「名前は余程油屋が好きなんだね」

「うん!ハクもみんなと同じで、仕事は嫌い?」

「私?私はね、」



ぱさ、と音を立てて帳簿をしまうハク
何となく後ろから抱きついてみると、ハクは腰に回された私の手にそっと自分の手を重ねた



「私も油屋が好きだ。だって、こうして毎日名前に会えるのだから」

「うん、私もハクがいるこの油屋が大好き」

「でも、名前はいつも働き詰めだろう?だから、たまにはこうしてゆっくり共に過ごすのも悪くない」



そう言って笑ったハクの瞳は、とても優しい色をしていた



きみがつくる甘い魔法
(退屈な休暇が好きになった、そんなある日)
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