影踏みの残像(1/1)
千尋が大活躍した次の日の朝
私はどたばたと走り回る足音で目を覚ました
「こんな早朝から、みんな精が出るわね」
今日は大湯の掃除をする日
予定時間まで1時間以上あるというのに、みんなはもう起きているみたいだ
「…ハク、千尋に心配掛けちゃった。やっぱり私はハクがいないと駄目みたい」
どんなに元気に振る舞ってみても、ハクがいない油屋は寂しくてつまらない
「私もまだまだね、今日は頑張らないと!」
両頬をぱん!と叩いて気合いを入れる
みんながいるであろう大湯に向かおうとした時、ばさばさと紙がはためくような音が外から聞こえた
「何だろう、鳥じゃないよね…」
窓を開けて外を見る
そこには、沢山の式神に攻撃されて苦しんでいるハクの姿があった
「ハク?!ハク、こっちよ、早く!」
窓を全開にして手を振る
ハクは私の声に反応してこっちに向かってこようとするけど、式神達がそれを邪魔して上手く飛ぶことさえ出来ない
「ああもう!焼き払え!」
私の手から放たれた炎がハクの周りを包み込む
式神達が怯んだその一瞬の隙をついて、ハクは湯婆婆の部屋へと飛び立った
「ハク!…行かなきゃ」
「お待ち」
部屋を出ようとしたその時、背後から声がする
不意を突かれて振り向くと、うっすらと透けた銭婆が立っていた
「銭婆…、何か御用?」
「あの竜を助けたかったら私の家においで、いいね」
「あ、ちょっと!」
私の返事を聞かずに銭婆はすっと消えていく
私は暫く悩んだ後、銭婆の家に向かうため窓から飛び降りた
影踏みの残像
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