窓辺

「シュバルゴー」

私は取り出した布を片手にシュバルゴの名前を呼んだ。窓辺で外を眺めていた彼が、ゆっくりと振り返る。なんだ、と言う眼差しに私は緩く微笑んだ。
「体、磨いていい?」
手元の布をひらひら示すと、彼はやんわり了解してくれてこちらに向かってきた。思わず、浮かんだ体に抱きつく。金属質の体が程よく冷えていて心地良い。えへへ、と私が笑うと、金属的な彼の鳴き声が苦笑するように耳元で鳴った。



「シュバルゴの体って、すごく綺麗」
水で濡らしたタオルで優しく彼の体を拭く。丁寧に手を動かしていくのはきちんと拭く為でもあるけど、彼の鎧をじっくり眺める為でもある。
騎兵ポケモン、シュバルゴ。名の通り、彼は騎士のような鋼の鎧に身を包んでいる。私は彼の鎧が好き。銀に光って綺麗なのはもちろん、頑丈な彼の鎧はいつも私を守ってくれるから。

「クォオン……」
ちらりと私の目を見やった彼に、私は笑ってみせる。
「私が磨いてるから綺麗なんじゃないよ」
「グォルル」
不機嫌そうに睨まれてしまった。彼の思いを否定してしまったことに、私は謝った。
「シュバルゴは優しいね」
「クオォル」
彼の鳴き声はとても硬質だけど、その呟きは柔らかいものだと分かる。本当に、彼は優しい。

大きな窓から差し込む陽光が、きらきらとシュバルゴの鎧に反射する。
まるで宝石みたい。宝石っていう表現をすると、彼はきっと嫌がるだろうから言葉には出さないけど。

「……クォ」
「ふふ、気持ち良い?」
「オオン」
「よかった」

良い返事が返ってきて、私も嬉しくなる。
やっぱりこの時間は大好き。すごく心が落ち着いて、嫌なことも忘れてしまう。これも彼のお陰だ。

「シュバルゴ」
「ォオン?」
「いつもありがとう」
「……クオォン、グオルルォン」
「えへへ……ありがとう、ほんとに」

体を磨いてる最中だっていうのに、ついまた抱きついてしまった。もう一回拭いた方がいいかなぁと、私が苦笑して尋ねればシュバルゴはやれやれと瞳を閉じて笑ってくれた。



end.

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