スモーカー

メンヘラ:依存体質

Gー5支部近くの喫茶店ウェイトレス

注文されていたコーヒーを注ぎにスモーカーさんの席に向かう。スモーカーさんは机の上いっぱいに資料を広げいつものように喫煙席で葉巻を加え作業していた。

「スモーカーさんって、タバコ依存ですよね」

「あ?依存もなにも、これが無ぇと戦えねーだろうが。俺の能力は知ってるだろ」

「知っていますよー。でも確か体を煙に変えられるんですよね?そしたら、わざわざ葉巻からの煙を使わなくてもいいんじゃないかな、と思いまして」

「・・・お前、タバコ嫌いだったか?」

「まぁ、好きではありませんね」

空いているマグカップにコーヒーを注ぎながらスモーカーさんと話す。私がタバコ苦手なのは本当だ。煙いし、体に悪いし。

「そうか。」

そう返事はするものの、タバコを止める気配は無い。まぁ、止めろとも言ってないし。ここ、喫煙席だし。ていうかスモーカーさんだし。

ちょうどここの喫茶店に私が働きだした頃から、スモーカーさんも異動になったようで、その時期からのお客さんだ。元々海軍のGー5支部の人達は素行がすこぶる悪い事で有名だった。この店はそんな人達が出入りしていたところで、一般の人達が来なくなっていた時、スモーカーさんが来店した。まぁ、素行が悪いといっても上下関係に厳しい軍のしたっぱ。スモーカーさんという上司が来店する事でしたっぱさん達はまったく来なくなってしまった。おそらく、スモーカーさんは店を守ってくれたんだろう。優しい人だという事は、とてもよくわかっている。

「・・・今日、私が試作で焼いたケーキがあるんですけど、いかがですか?」

「あァ、貰う。」

資料から目を話さずにそう答える。きっと、ケーキも完食してくれるんだろう。優しいのに、それを見せないのがこの人の好きな所だ。

       *

「スモーカーさん!!忙しいのにどこに行ってたんですか?!もしかしてまた****さんの喫茶店ですか?!」

「うるせぇよたしぎ。・・・つーかなんでお前が****の名前知ってんだよ?」

「部下の皆さんに聞きましたよ!資料まとめるのは結構ですけど、ここにいてもらわないと困るんですけど!」

「あーうるせぇ。」

「スモやん、しょっちゅうあの店いってんなー。俺達追い出したくせによ」

「そうだそうだ!あそこの店はいくら騒いでも文句言わなかったから、俺たちの安らぎだったのに!!」

「お前らがいたから一般の客が来なくなってただろ。俺はいいんだよ」

部下達がぎゃあぎゃあと俺を攻める。そりゃそうだ。ほとんど毎日パトロールと称してあいつに会いに行っている。書類仕事なんざガラじゃねぇ。・・・それ以外にあの喫茶店でやることが無ぇだけだ。ここに異動になってから、パトロールついでに町の散策に行った時に喫茶店の外から不機嫌そうな****の顔をみた。客商売だってのに、なんて顔してんだ・・・と思い、視線の先を見ると俺の部下どもが騒いでいるのを見た。・・・あァ、そんであいつあんなに怒ってのか・・・と思っていると裏からモップを持ってきて俺の部下に近づいていった。・・・さすがに一般人と乱闘騒ぎはまずいと思い、俺もそこに入ることにした。それがきっかけだった。

「スモやん、葉巻は?」
「本当だ!葉巻吸ってないスモやん、初めて見た・・・」
「もしかして****に振られたから今日はここにいるんじゃ・・・」
「あぁ、だとしたら話しかけない方がいいよな・・・葉巻吸わないくらい落ち込んでるなんてみてらんねぇぜ・・・」
「依存症って、こうやって治すんだな」
「ってか****ちゃんに依存してんのかタバコに依存してんのかどっちだよっつー話だよなー」

「お前ェら、全部聞こえてんだぞ・・・」
ちょうどヤニが切れてイライラしてた所だ。能力を使って文句を言ってきた部下を凝らしめることにした。

「スモやんが怒ったぞおおおお!にげろおお!!!」
にしても****依存症か・・・ありえねぇだろ、そんなもの。


     *

「いらっしゃいませースモーカーさん、いつもの席でいいですか」

「おう、頼む」

「あ、この子今日から入った新人君です。今日一日私と一緒にサービスします」

「・・・おう」

「いいいいいらっしゃいませ」

「あのね新人君。この人怖そうだけど怖くないからね、海軍だから」

「海軍様であらせられまするか!****さんと働かせていただきます!よろしくお願い差し上げます!!」

「・・・お前、大丈夫か」

「見ての通り、新人なので多目に見てあげてくださいね」

いつもの席に通されると、新人がカタカタとカップを揺らしながらこちらに運んできた。・・・案の定あいつは滑って転んで盛大に自分にコーヒーをぶちまけた。

「あっっっっつ!!!すみません、すみません!!」

「ちょっと大丈夫?!あ、スモーカーさんのコーヒー、後で届けます!冷やさないと!」
そういって****はそいつの手を肩に回し、裏へと運んでいった。

おい、今肩に回した方の手****の胸に触んなかったか?新人のやけどの心配よりもそちらの方に意識がいってしまい、なぜか胸の奥にチリ、と嫉妬心が沸き上がった。

めんどくせぇ。俺はあいつのためにタバコ辞めてんのによ。俺が入ってきた時に****は気づきもしなかった。

姿は見えないが客が少ないためか、バックヤードの声が聞こえてくる。
大丈夫?だの、次頑張ろうね、だの・・・ふざけんな。

しばらくしてから****がコーヒーを持って戻ってきた。

「お待たせしました、スモーカーさん。彼病院行かせるために帰しました。コーヒー、遅れてすみません」

「・・・・お前もついでに、」

着いていけばよかっただろ、お似合いだ。と言おうとしたが先に****に俺が待っていた言葉を言われてしまった。

「そういえばスモーカーさん、タバコ今日どうしたんですか?」

「っ・・・。お前が嫌いだといっただろうが」

「え?私のためにですか?お客様に遠慮してもらわなくてもいいですよ。それに、タバコ嫌いですけど、葉巻吸ってるスモーカーさんは、かっこいいから気にしてないですよ」

「・・・なんだそりゃ」

「前ここで部下の人達を押さえてくれた事があったでしょう?その時に能力を見て、なんて葉巻が似合う人なんだって思ったんです。だから、今日店に入店した時から不思議だったんです」

・・・こいつには本当敵わねぇなぁ、と思いながら胸元から葉巻を取りだし、火をつけた。


(でも依存症はよくないですよー)
(依存じゃねぇ。いつでも止められるからな)
(一瞬過ぎません?)










 



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