ロー
メンヘラ:束縛
運命だと思った。そして自分からもう二度と離さないと誓った。
とある島に上陸した時、クルー達は女の子がたくさんいるだの久しぶりに暖かい地上に出てこれて
歓喜していた。まぁ俺もクルーが喜んでくれるのであれば喜ばしいことではある。どこか武器の手入れが出来るような武具屋はないか・・・と町を散策していた時。
パリーン、とグラスが割れる音がした。音がする方に自然と目がいく。そこはオープンスペースがある喫茶店のようだった。
グラスを割ったのは俺より年下くらいのウェイトレス。気まずそうな顔をしていた。
「****!!!またあなたなの?!毎日毎日、いくつグラスを割れば気が済むの?!」
その音を聞いて駆けつけたらしい女性が****と呼ばれた女に対して怒っていた。
(なんだ、あいついつもあんな感じなのか。あの人も大変だな・・・コラさんみたいだ)
懐かしい人の顔を一瞬を思いだし少しだけ胸が痛んだ。でも、いくらドジが似てるからといって・・・
「あははードジっちゃいました!」
その言葉を聞いて、コラさんの背中がよく燃えていた事を思い出した。そう、コラさんはいつだっていろんなヘマをして、俺を笑わせてくれてたな・・・絶対本気でやってたんだろうけど。
「ドジっちゃいましたーじゃないわよ!あーもー!どうしてあなたはそうそそっかしいのかしら?」
「いや、全部わざとですよ?いまのもコーヒーの中に虫が入っていたからお客様に提供する前に自分でどうにかしようと・・・あ、私もかたづけしま、うわぁ!」
今度は、自分がこぼしたコーヒーを片付けようとして、それを踏んで転んでいた。
・・・さっきからなぜか胸の高鳴りが抑えられない。あいつ、もしかして本当にコラさんの・・・
「あなた前海軍で働いてたんでしょう?そんな事でよく勤まったわね?!」
「勤まらなかったから、ここで働いています!」
何から何までコラさんを思い出させるその女に、今日見ただけの女に、
俺はたまらなく惹かれた。
そして、いつのまにか許可無くそいつを連れ去り、自分の船に乗せていた。
やめて、はなして、と聞こえていたがそういう訳にはいかない。だってきっとこいつはコラさんの生まれ変わりだ。俺がこの島に来てこいつと会ったのも、俺の前でドジ踏んだのも。こいつの過去もなにもかも。巡り合わせに決まっている。だから、もう二度と離さないようにしておくのは当然だろう?
「なぁコラさん。俺海賊になったんだよ。でも、全然寂しくはないんだ、だって」
物置の奥にある、俺だけのオペルーム。そこにかくまう事にした。もし、ドフラミンゴファミリーにでも見つかったら大変だ。
コラさん、次は絶対に俺が守ってやるからな。
「・・・あの、すみません。人違いです。私は、****と言います・・・こらさん、ではありません」
「あぁ、今はそういう名前か。でも大丈夫だ。魂はきっとコラさんの物だしそのうち思い出す」
「・・・あなた、なんなの。怖い」
「ローって呼んでくれよ。****」
コラさんを信用してないわけではないが、今はまだ****としての記憶の方が強いだろうから、逃げ出しそうで、鎖をつけておいた。これで、逃げ出すことも出来ない。こいつを守ってやれる。
「俺は、ただ守りたいだけなんだよ。なぁコラさん。愛してるって言ってくれよ。あの時、言ってくれたじゃないか」
「・・・私は、こらさんじゃないです・・・、っ?!」
まだ、****の意識が強く残り過ぎているようだった。
だから、彼女の細い首に手を這わせ、軽く首を絞める。
「コラさん、コラさん、思い出してくれよ。俺、海賊になったけど自由になったんだよ、あんたのお陰で」
「や、めっ・・・くるし、」
緩急をつけて首に力を入れる。
「なぁ、俺あんたがいないとだめなんだ。ちゃんと病気も治ったよ。強くもなった。今ならあんたを守れるから、だから」
「・・・ロー、やめて・・・!!」
「!コラさん、やっと名前・・・!」
コラさんがやっと俺の事を思い出してくれた。やっぱり俺の考えは間違ってなかった。
それが嬉しくて、俺はコラさんを抱き締める。
「コラさん、愛してる。次は絶対離さない。俺が、守るからな」
「たす、けて・・・」
「あぁ、俺が助けるからな。もう、ドジ踏んでも俺がサポートしてやるよ」
*
やっと再会できたというのに、あの日以来コラさんは笑ってくれない。
しかも、たまに****が出てきて、俺とコラさんを邪魔をする。
タバコも体に慣れてないとかで吸ってくれない。
まぁ、いままで****として生きてきたのであればすぐには難しいだろうな。
でもいつかはきっと、あのコラさんと過ごした辛くも楽しい日々を送れるように。
本来のコラさんが帰ってくれるように。
今日もまた、オペルームに会いに行く。
前 次