恋はいつでも


最初のまったく会えなかった一週間が嘘のように、最近はマルコさんと一緒に過ごすことが多い。といっても、もうすぐ次の島に着くらしいので買い物リストを作ったり、足りない物の確認をしたりするだけなんだけど。まぁ、量が多いわけで・・・。マルコさんの部屋の机に椅子を二つ並べ、仕事をしている。
「***、疲れてないかよい?」
「大丈夫ですよ。次の島に着くのはいつごろでしょうか・・・終わりますかねー」
「大体2.3日の間には着くよい。・・・寒かったりとかはないかよい」
「平気です。」
親父さんに挨拶に行って、「しばらくいろ」宣言からなぜかマルコさんが過保護になった。元々気を遣ってくれていたのはわかるんだけど、なぜかいつも心配してくれている。
ふと、借りたジャケットでサッチさんにからかわれた事を思い出した。

・・・・・
***はマルコから借りたジャケットを日常的に着るようになっていた。
「***ちゃん、マルコのジャケットよく着てんなーそれでかくねーか?」
食堂で昼食を済ませた後、サッチが***に問いかけた。
「うーん大きいんですけど、まくったりすれば逆に着やすいんですよね。・・・あと着てないと『女の子は体をひやしちゃだめだ』ってマルコさんが心配してくるんです」
「そういうもんなのか。」
「あと仕事がたくさんで困っていたから、これ着てれば話しかけられないってアドバイスもらって。ほんとに重要な仕事しか任せられなくなりました」
「あー・・・そういうことか。原因はそれか。」
「マルコさんって優しいですよね。」
「・・・あのな。***ちゃんにいうのはアイツに怒られそうだから言わなかったけどね。あそこまで優しいのは***ちゃんにだけだよ。」
「えっ、そうなんですか」
「よく考えてみてよ。マルコが優しかったら***ちゃんのジャケットみてもみんな避けないだろ?」
「た、たしかに・・・」
「まぁ、囚われのお姫様を可愛がってやりたいんだろ、アイツとしては」
「囚われてもないし、お姫様っていうのも違う気がしますが・・・」
「はっはっは!こっちの話だ。まぁ、マルコの好きにさせてやってくれよ。***ちゃんのおかげでアイツの機嫌が良くて、こっちも助かってんだ。前は無茶してたのに***ちゃんが来てから、落ち着いたし」
「無茶って例えば・・・?」
その問いにサッチが口を噤む。
「それはアイツから聞きな。で、怒ってやってくれよ。***ちゃんの言うことなら聞くだろ」



・・・・・・

マルコさんの部屋では紙の擦れる音と、ペンが走る音だけが響いていた。
私は手を休めずに問いかける。
「マルコさん、いつも無茶ばっかりするって聞きましたけど、そうなんですか?」
途端、マルコさんの手が止まる。
「サッチかよい」
「はい。」
「・・・無茶はしてねーよい。俺は不死鳥になれるから、偵察含めて一人でやるんだが・・・大体仲間呼ぶ前に倒したり、沈めたりしてんだよい。多分そのことだよい。多少傷ついたくらいじゃ治せるし、全部一人でやれるよい。他のやつ呼ぶまでもないからねい」
その話を聞き、つきん、と胸が痛んだ。この人はとても強い。そのことは体に刻まれた古傷や筋肉、あとクルーからの信頼を見ればわかる。でも、それでも。
「マルコさんが強いのはわかります。クルーを呼ぶまでもないってことも。でも私は、私がいないところでマルコさんが傷つくのは、いやです」
空を飛んで、皆を守るための行動と信じ、自分が傷つく。そんな彼を想像する。彼が飛んでいる空は孤独なんだろう。つい涙声になってしまう。
「***・・・」
お互いに目を合わせる。
「治っても、きっと痛いに決まってます。サッチさん達も、それを一人でさせてしまった事が悲しいと思うんです。私も、それはいやです・・・」
もし、一人でいる時に致命傷を負ったら、
もし、取り返しがつかないことになったら。
「私次そんなことしたって、誰かに聞いたら、きっと泣きます・・・。」
「***・・・」
「だから、無茶しないでくださいね。私もマルコさんが好きですから」
私に優しいマルコさんが自分を大切にしないなんて、絶対に許さない。自分以上に大切にしてくれる、この人に私はこれ以上何をしてあげられるだろうか。
そんな事を考えていたら、目の前のマルコさんが近づいてきて、抱きしめられた。
「マ、ルコさん」
「ありがとよい」
そう短く言った彼は、さきほどよりも強く抱きしめられる。
「ごめんな。・・・確かに、無茶したのは事実だよい。でも今は、***がいるから無理せずに戻ってこようって、思えるんだよい。だから」
「・・・」
「そんな顔させたいわけじゃないから、泣くなよい・・・」
「泣いてないでず」
「鼻声になってるよい」
そういって後ろの方で笑い声が聞こえる。
とくん、
とくん、

果たして、この少し早い胸の音はマルコさんのものだろうか。それとも自分のものだろうか。

(恋はいつでもハリケーン)











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