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齢11の時、早苗は天涯孤独になった。

両親が別居し、異人の母の元に早苗が引き取られた矢先であった。

母は鬼という化け物に喰われ死に、早苗もあわやという所で1人の少年に助けてもらった。

その後、早苗は別離した父の自宅に少年に介助されながら訪問した。
鬼に噛まれ血が滴る足を引きずり、よろよろと歩く彼女を支えながら傍らに立つ少年は、煉獄杏寿郎と自ら名乗った。

訪れた早苗に対して、父は心配したり、母を殺した鬼に憤ることも無く、ただ冷たく感情のない目で見下ろす。

「お前も死ねばよかったのに」

父の言葉は、彼女の心に深く突き刺さった。

早苗は日本軍将校の父とロシア人の母を持つ混血児であった。
母という後ろ盾を失った我が子をまるで掌を返すように、冷たくあしらう父を見て早苗は愕然とした。

今まで慕っていた父が豹変した態度に、早苗は頭が真っ白になった。
それからどうやって父の家から離れたのか覚えていない。

気がつくと、早苗は見知らぬ邸宅にいた。
正面に見えるは檜の天井板だ。
どうやら自分は寝かされているらしいと彼女は推測した。
傍には早苗を救い出してくれた杏寿郎が、正座をして真っ直ぐ前を見つめていた。

早苗の意識は段々と視覚から聴覚まで取り戻しつつある。

「…であるからして、お館様。
こちらのお嬢さんの待遇について、私に一任していただけないでしょうか!」

杏寿郎は彼の正面にいる誰かに向かって進言している。声がよく通る。

早苗はぼんやりとした表情で、杏寿郎から正面の方へと視線を移す。
1人の青年が早苗を見下ろしていた。
彼の額には一部分、焼け爛れたような痣が見えた。

「…事情は分かったけれど、杏寿郎。
この子にも直接聞かなければならないね。

おはよう。よく眠れたかい」
「…はい。お陰様で」

寝起きだからか、声が掠れ気味になる早苗に対して青年は無理をせずともよいと言う。

「いずれにせよ、この子には休息が必要だよ。
待遇についてはまた後日改めて相談しよう、杏寿郎」





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