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「…カナエさんとお別れをしてから、あの日のことを夢にみるのが多くなった。
母も、カナエさんもあんなに優しかった人がどうして、死ななければならなかったんだろう。

私はこうして里にいるだけで、実際に鬼と対峙することがない。それがどうしても歯痒い。

あの日杏寿郎が助けに来てくれるまで、生き残っていたことが奇跡だと思うくらい、鬼の怖さを知っている筈なのに。
…結局、自分は何も成し遂げられないのかという気持ちに襲われる。手を動かして何かを作りださないと、ずっとその気持ちに囚われてしまう」
「…では、君はどうしたいのか。
鬼殺隊に入るのか?」

杏寿郎は静かに早苗に問いかける。彼の纏う空気がいつもとは異なり、ぴりぴりとした緊張感がある。早苗は圧倒されてしまい、無言で首を横に振る。

目の前にいる人物は戦士であり、生身で鬼と戦っている。
悪夢で怖気付いているとはいえ、彼に向かってどうしようもならないことをぼやいたことに早苗は後悔した。自分の中に迷いがあることに、彼は軽蔑しているだろう。

「…ごめん。弱音を吐いて」
「…いや。俺が早苗だったら同じ気持ちになる。
弱音を吐かずにいられる人間なんているものか。

そうして取捨選択をして、人は成長していくものだ。俺も悩みに悩んだことは沢山ある」


翌日。

「…何でコイツがいるんだァ?」
「お構いなく!鍛冶師殿!」

早苗に付き添って作業小屋に来た杏寿郎を、面倒だと言わんばかりに舌打ちをする鋼鐵塚は早苗に今日一日休めと言う。

「え!?何でですか」
「集中出来ないからに決まってんだろうが!
ほらさっさと行け!」

しっしっとまるで動物を追い払うかのように、早苗と杏寿郎を小屋の外に追い出した鋼鐵塚は勢いよく引き戸を閉めた。

「…」
「…すまない、俺がついて行くと言ったばかりに…」
「…まあいいや。鋼鐵塚さんがご褒美に休みをくれたと考えれば」

二人はすごすごと里の中心地に戻るのであった。


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