×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -





杜王町は港町である。

夏になると、例年のように県内外からレジャー目的の観光客が押し寄せる。
観光客がこの町に滞在する間、彼らが落とす旅費は町の財源の1つになっている。

普段は禁止されているアルバイトも長期休み期間中には許可が下りる為、この町に住む高校生は夏が来るのを今か今かと待ち望んでいるくらいだ。

美登里の周りも何人かは高校生になった今、アルバイトをしなければと意気込んでいる。
彼女自身も興味はあるが、応募をして面接に行くという実行に移していない。

話は打って変わるが、美登里は杜王町の観光スポットである海水浴場から少し離れた港湾にいた。時折風が運んでくる潮の匂いが鼻をつき、塩辛い匂いが彼女の肺を満たす。

東京にいた頃は自然と触れ合う機会が少なく、杜王町に越してきてから時々嗅いだ事のない匂いがするのを不思議に思ったが、その匂いの正体が海であった事に美登里は改めて気づいた。

地元で生まれ育った同級生の前ではなかなか話題に出来なかった事であるが、腑に落ちた今、改めて自分は今までと異なった環境にいるのだとも改めて自覚したのであった。

美登里は深呼吸をしてから口を堅く結び、ほんの数十分前に受けた襲撃を思い返していた。

その敵に今度こそ反撃するチャンスを伺う為、美登里は承太郎、仗助、億泰それから康一とともにこの港湾で待ち構えているという経緯である。




数十分前、正確にいえば正午より1時間前の事である。

仗助や億泰、康一そして美登里は承太郎からの呼び出しに応える為、学校の昼休み前に授業を抜け出し、市街地から離れた高台にある空き地に集まっていた。

承太郎の呼び出しを受ける前に、数日前とあるスタンド使いに襲撃を受けていた事を仗助に相談していたは美登里は、何故この僻地に呼び出されたのか合点がいっていた。

そのスタンドは電気がある所ならどこへでも出現できるので、見渡す限り電線も通っていなさそうな町の外れにある空き地を、承太郎が自身の味方であるスタンド使いとの密談場所にしたのだろう。

後から到着した承太郎は、予想通り、ここは電気が通っていない場所であるから例のスタンド使いを如何にして返り討ちにするか密談するにはうってつけの場所であると、辺鄙な所に呼び寄せた承太郎に納得がいかなさそうな様子を見せる億泰を宥めるように説明する。
そして続けて、そのスタンドを追跡する事が出来るスタンド使いが今日杜王町の港に船でやってくるとも告げた。

その人物こそが、仗助の実父ジョセフ・ジョースターであった。


(2/5→)





-36-


目次へ