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「…トニオさんは、昔から料理人になりたかったのですか?」

と美登里は何気なく尋ねたが、トニオはそれを聞いた途端、少しだけ顔を曇らせた。

「す、すみません…!こういう質問、不躾だったでしょうか…」
「そ、そんなことはないですヨ…!

ただ、昔のことを思い出してしまって…。
…それでも聞いてくれますカ?」

美登里が頷いたのをみると、トニオは静かに自らの身の上話を語り始めた。

イタリアの没落した貴族の出であること、金欲しさに身分を売り買いする父に悲観して料理人になると言って勘当されたこと、そして弟に夢がないと言い残し家を去ってしまったこと…

穏やかな物腰の彼から到底想像しがたい身の上話に、美登里は困惑をしながら同情を寄せる。

「…私も最近までは"夢がない"、ただ漠然と毎日を過ごしていました。

父に言われたことだけをやって、怒られたくないからいい子にしている、そんな毎日でした…」
「…弟にも、そしてアナタにも、夢がないということは悪いことではアリマセン…ただ…」
「あ、トニオさんの言いたいことは分かります!

私も最近、こうなりたい、こうしたいという気持ちを持つようになりましたから…。
弟さんも、トニオさんと離れている間に、目標を持てるようになっているかもしれませんよ」
「…そうだといいのデスガ…」

トニオの弟を思う気持ちに触れ、美登里はこう思った。

「(…代々続く貴族の家でも、綻びが生じれば家族の絆はたち消える。

人の生活、歴史というのは、切っても切れないような関係なのかな…)」

トニオの家庭事情から、美登里は歴史という現象に興味を持ち始めた。
それは、この杜王町に来てからというもの、スタンド使いを通して、人々の根にある感情が大なり小なりとも日々の生活を動かしていることを分かるようになったからだ。

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