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所かわって、ここは杜王町霊園近くにあるトニオが営むレストランである。

あの後友達2人と別れた美登里は、紙袋を2つ両腕に抱えるトニオの手伝いを申し出た。

約1ヶ月半くらい前、初めてレストランを訪れた以来だったが、トニオの穏やかな物腰に美登里は安心し、以前から交流があるかのように彼に親しげに話しかけていた。

店の勝手口から入ると、厨房に繋がっていた。
トニオは美登里に紙袋を入口近くの棚に置くよう指示すると、次に手洗いを促す。

厨房に1度入れば清潔にすべし、というトニオの信念に従い、美登里は丹念に石鹸で手先や手首まで洗い除菌した。
それからトニオの指示に従い、黙々と料理の下拵えの手伝いに取り掛かった。

台所に立つのは自宅でも頻繁ではなかったが、トニオから教わるにつれ料理は楽しいと美登里は思うようになってきた。

下拵えの準備が終わったのは、午後の開店時間まで後2時間くらいのことだった。
トニオが手伝いをしてくれたお礼に、と冷蔵庫からデザートを出してくれたが1度美登里は遠慮した。

しかし、トニオが話しをしながらデザートを一緒に食べましょうと言ってくれたので美登里はやっと頷いた。

トニオが淹れたコーヒーを美登里は一口飲み、そしてデザートも一口ずつ味わう。
生地が固めのプリンはコーヒーの苦味と相まって、絶妙に美味しい。

「…私にも、こういうデザートとか美味しい料理作れるかなぁ…」
「うん、美登里サンなら出来ますヨ!
今度教えまショウカ?」
「はい!是非」

美登里の言葉に微笑むトニオに、美登里は先程まで料理人の顔をしていた彼を思い出した。
いつもの穏やかな顔つきから一変して、少しの妥協も許さないという厳しい表情と変貌した様子に、美登里はプロフェッショナルというのはこういうものだと悟った。

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