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ある土曜日。
正午を目安に、杜王駅の駅前広場で美登里と待ち合わせの約束をしていた仗助は、ゆっくりと歩を進めながら向かっていた。

事前に今日のスケジュールを決めていたが、漏れがないように頭の中で最終確認をして、ふと我ながらマメだなと少しだけおかしくなる。
ミスをしても彼女は笑って許してくれるだろうと、これまで築いてきた信頼関係でそう期待をしている。
ただ己の中の面子に関わるという理由である。

6月入ってまもなく、梅雨特有のじめじめとした雨模様が続くが、今日は晴れの天気である。
出かける際、母の朋子からお出かけ日和じゃあない、よかったわねと声をかけられた。

「美登里ちゃんとデートかぁ〜、仗助もやっとそういう年頃になったのね…」
「…じゃあ行ってくる」

母から揶揄うような口調で言われ、いつもなら照れ隠しに言い返すも、仗助は今日は大人しく受け流した。



正午を間もなく迎える杜王駅付近は、平日土日関係なく人通りが激しい。駅に向かう人達は、仗助と同じようにS市中心部に向かうのだろう。

駅前広場でも人が多いのは変わらなかった。
仗助は腕時計の針をみて、待ち合わせの時間より少し早いが美登里が来ているかもしれないと思って辺りを見回す。

待ち合わせ場所付近に着くと、見慣れた姿があった。仗助が名前を呼びながら近づくと、美登里は仗助の方に目線をやる。

いつも見る制服姿とは違って、私服姿の彼女はまた違った雰囲気だ。
白地にストライプ柄のシャツワンピースを身にまとった彼女をみて、今日の為に着てくれたのかなと仗助は思いを馳せる。
彼女の手首にはシンプルなブレスレットがあり、いつも見る姿より新鮮なものと映る。

「ごめん、待った?」

仗助がこう尋ねると美登里は首を横に振る。

「ううん、今来たところ」
「…じゃあ行くか」



その後、2人はS市中心部で一緒に買い物を楽しんだり、土日限定のイベントを観て楽しんだりした。
行くところ全てに興味を示してくれた美登里の様子をみて、仗助は内心ほっと一安心する。
計画を練った甲斐があるというものだ。


「…仗助くん、今日はありがとう。いろんなところ行けて楽しかった」

帰りの電車の中、横に座る美登里がぽつりとそう言うので、仗助は向かい側から見える外の風景をぼんやり見ていた視線を彼女に移す。

「…でもね、我儘を言うなら杜王町で仗助くんが好きな所も行きたかったなぁって…」
「俺の好きなところって…うーん、女の子が行っても面白くないと思うけど…」
「そっか…そうだよね。我儘言っちゃってごめんね…」

仗助は突然の彼女の申し出に驚いたが、しょんぼりしたような彼女の横顔をみて、消去法で行きつけのCDショップならいいかもしれないと思った。(行きつけのアイスクリーム屋も考えたが、夕方である為に却下した)
音楽が嫌いな人はいないという自論であるが。

美登里に申し出ると、彼女は途端に目を輝かせる。そうと決まれば予定を変更して、仗助の行きつけのCDショップに行くことになった。

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