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第10廻 その娘、菩薩で阿修羅





1998年 春



かつて鬼人と呼ばれた侍・阿弥陀丸を無事 仲間として迎えた葉は、阿弥陀丸と共に家路についていた。
心を通わせ友となった二人は、笑い合いながら歩く。



「ただいまー」

「おかえり。お友達?」



葉の声と感じたことのない気配に、螢は玄関へと顔を出した。
まさか人がいるとは思わなかった阿弥陀丸は、顔を真っ赤にして葉を問いただす。



「ああ、オイラの」

「葉殿ぉぉぉぉぉ!! ちょっ、ちょっと詳しく聞かせるでござる!!」

「な、なんだよ阿弥陀丸、どうしたんよ!?」

「ふふふ… 初めまして、葉の姉の螢です」

「へ… あ…ね…?」

「うん」



笑顔で肯定する少女を唖然と見つめ、葉と螢を交互に見やる。
同棲かと思って慌てた己が恥ずかしくなり、更に顔を赤くさせた。



「も、申し訳ござらん、葉殿…」

「うえっへっへっへ。気にすんなって」

「螢殿。挨拶が遅れ、かたじけない。拙者、阿弥陀丸と申す」

「よろしくね」



まったく気にした様子もなく、小首を傾げてにっこりと微笑む。
葉と阿弥陀丸に上がるよう告げて、台所へと戻っていった。



「葉殿、疑うわけではござらんが、螢殿は本当に姉君で?」

「ああ。あんま似てないって言われるけどな」

「いや、そうではなく…」

「…ねえちゃんのが年下っぽいとか言ったら、本気で怒られるぞ」

「これ、小童。妾への挨拶はないのか」

「あいたっ」



いささか不機嫌な小狐が葉の頭を小突いた。



「すまんすまん。ただいま、狐珀」

「葉殿、この小さき狐は」

「いかん、阿弥陀丸!」

「人間霊が妾を愚弄するか!」

「ぶふっ!!」

「あぁぁぁ…間に合わんかった…」

「あらら… 狐珀。おいで」



今の騒ぎで再び顔を覗かせた螢は、不機嫌な自分の持霊を呼び寄せ優しく抱き上げる。
よしよし、と頭を撫で



「あとでおいしいお揚げあげるから機嫌直して」

「…5枚じゃぞ」

「わかった」



苦笑した。
螢が狐珀の機嫌を直している間、葉は阿弥陀丸に狐珀について慌てて紹介する。


一つ 狐珀は狐の精霊で、螢の持霊である
二つ 今の姿は仮の姿らしく、小さいという言葉をなぜか異様に嫌う
三つ とにかく強い、怒らすと怖い



「なるほど…」

「素直に謝っといたほうがいいぞ」

「うむ。 狐珀殿、大変失礼致した。拙者、まだまだ未熟者故、どうか許してはいただけぬか」

「良い。許す」

「狐珀は素直な子には寛大だよ〜 でも、禁句ね」

「き、肝に銘じるでござる」

「ご飯作ってるから、仲良くね? …次は私が怒るわよ」

「!! はいっ!!」

「む……… 妾はもう怒っておらぬ、心配するな。な?」



螢の言葉に動揺する葉と狐珀を眺め、阿弥陀丸は察した。
見かけによらず、この娘が一番怖いらしい。



「ビビった……」

「よ、葉殿。螢殿は怒らすと…」

「彼奴を怒らせれば地獄を見る」

「地獄……」

「ああ…普段めちゃめちゃ優しいからな、そのギャップもあって死ぬほど怖ぇんよ…」

「螢は菩薩で阿修羅。心得ておくと良いぞ」

「肝に、銘じるでござる………」













聞こえてるんだけどなぁ
まっ、いっか









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