現状にため息

ヨウカがトラファルガー・ローの指示で助けられてから2週間が経つ。


窓から差し込む朝日にヨウカは目を覚ます。それと同時に何度目ともしれないため息を吐いた。
身近にある気配と腰に回された腕、そして極め付けには首筋にあたる吐息。
もう一度深いため息を吐いて、ようやく動き出す。

だが、数分したところで、拘束が強くなった。


「……まだ、寝てろよ」
「…仕事………」


じたばたと暴れながら、言葉少なく言えば呆れたような溜息とともに彼は拘束を緩めた。


「…行ってきます」
「ああ」


眠そうに彼、トラファルガー・ローは答えてまた眠りに入った。


* * *



パタリと極力音をたてないように船長室の扉を閉めて、食堂に向かってヨウカは歩き出した。
その表情はお世辞にも良いとは言えない。
なぜ船長室で寝起きしなければならなくなったのかと、ヨウカは幾度目かの自問を始める。

事の発端は目が覚めてから二日目のことだった。
いろいろな状況から、ここが異世界だと理解した彼女とローはとりあえず傷の治療に取り掛かった。しかし、服をめくってみてもあるはずの傷はそこになかった。確かに昨日まではあったのに。そして、代わりと言わんばかりに、奇妙な刺青があった。

剣を抱く翼竜。

何を意味するのかはいまだ分かっていない。
しかし、怪我が治ったなら医務室にはおいておけない。しかし、あいにく空き部屋はなく、倉庫でという選択もあったが彼女は“客人”。そこで彼女の部屋をどうするかを船長のローと実質bQのような立ち位置にいるペンギンとで話し合いが行われたらしい。かくして、紆余曲折を経てヨウカは船長室で寝起きすることに決まった。
それを告げる際の楽しそうなローとは対照的に鋭い瞳でペンギンが見ていたことを鮮明に覚えている。


はっきり言って、ペンギンの反応が正しいのだ。
先日紹介されたクルー達の反応はある意味有り難く、ある意味間違っている。そして、自分も次の島で下りたいのだ。切実に。
例えそれが、意味のわからない世界に来て、右も左も分からなかった自分を助けてくれた彼らの船であっても。否、その彼らの船だからこそ降りなければならない。
自分はお荷物にしかならないのだから。

そうしてここ数日のことを思い返していれば、いつの間にか目の前には食堂の扉が。一つ吐息を吐いて扉を開けた。


「おう、お嬢。おはよう」
「おはようございます、ダツさん」
「いやー、いつも悪いな。他にも仕事あるんだろ?」
「居候の身ですから……」


苦笑してそう言ったヨウカ。
確かに仕事は結構有るのだが、大抵クルー達が手伝ってくれるし、力仕事系統の物は彼らにとられてしまう。ヨウカが何度もやらせてくれとは言うのだが、彼等は聞く耳を持たずやってしまう。
そのお陰か、彼女は結構な暇な時間をどう過ごすかが今のところの問題であったりする。


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