「でも、何か役に立ちたくて…」
「アルエちゃん」
険しそうな表情から少し憂いを帯びたような、普段は決して見せない真面目な表情に変わる。
「普段から皆の役に立ってるじゃない、態々危険な目に晒されるような事をしなくても良いんだから。…それに」
「それに?」
「アルエちゃんが怪我するところなんか、もう見たくない」
――これ以上大切な人を失いたくない。
言外に込められた言葉はアルエに通じただろうか。
レイヴンはアルエの怪我をした腕を優しく撫で、アルエを見上げた。
「だからね」
――傍から離れないで欲しい。
過保護なのではない、愛する人を心配するからこそする、普通の行動。
確かに行き過ぎたところはあるかもしれないが、それは彼女の身を按じているからであって、周りからは理解されないかもしれないけれど。
それでも、彼女を失いたくないから。
「…離れちゃ、だめよ?」
その言葉に静かに頷いているアルエの姿を見て、レイヴンは漸く安心したのか、いつも通りの笑みを浮かべた。
「離れないで」