「かご?」
「かごです」

何の前触れもなくアルエからかごを差し出された。
一体どうしろというのか。いや、彼女は何を期待しているというのか。
訳もわからず、レイヴンはアルエからかごを受け取る。

「…アルエちゃんはどうして欲しいの?」
「どうしてって…私は頼まれただけなので…とくに要望もなにもありませんよ」


――誰だ。一体誰の入れ知恵だ。


まさか、アルエからの贈り物なら被ってくれるなどと馬鹿げた事を考えている輩がいるのだろうか。
いや、思い起こせば居るではないか。髪の長い青年と、重そうなハンマーを振り回す少年が!

「因みに誰に頼まれたの」
「ユーリですよ」


――だろうと思った。


さて、どうしたものかと考える。
アルエが興味津々で此方を見る。


――そうだ。被りたくなければ、被らせてしまえばいい。


そう思うが早いか、レイヴンはアルエの頭目掛けてかごを振り下ろした。

「ふがっ!?」

何が起きたのか一瞬理解が出来なかったアルエは情けない声をあげる。

「ちょっ、レイヴンさんなにをっ」
「アルエちゃんにあげるわ、そのかご」

似合ってるわよーなんて事を言いながら、レイヴンはその場から逃走した。
残ったのは、かごの隙間に髪が絡まり、取るに取れなく、見悶えているアルエだった。

「レイヴンさーん!取ってくださいー!いた、痛い痛い…っ」



かご

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