「何だ、アルエはまたメイドの格好をさせられてるのか」
以前、演劇で使用した魔王の衣装と悪魔セットを着けたユーリに肩を叩かれ、話し掛けられる。
ビクリと身体を震わせながらも、悟られてはならないとアルエは平静を装った。
「うん…前よりスカートは長いからまだマシ、ですね…」
「ま、余興だと思って楽しめよ、あと…お菓子。カロルにせびられるだろうから渡しておくわ」
と、言うユーリから手作りと思われる菓子の詰まった袋を渡される。
「美味しそう…」
「何なら一袋やるよ、食ったって誰も文句言わないだろ」
ひらひらと手を振りながら、ユーリはエステルの元に向かってしまった。
ユーリが離れたことによって、緊張感が一気に無くなり、ふらりと立ち眩みが起こる。
――ちょっと…苦しいかも。
かと言って、椅子に座ってしまえば、中に入っているそれが更に奥に入り込んでしまいそうな気がして、不用意に座ることも出来ない。
いっそのこと、バレない内に取ってしまおうと、化粧室に向かう。
途中、エステルに声を掛けられたが、最早応答する気力も無かったので、何かと理由をつけてあしらう。
(ごめんなさい、エステル)
悟られないように