「レイヴンさん?」
「…んー?」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ?…どうかした?」
「いえ…」
本当だろうか。
此処最近、上の空というか何度話し掛けても反応が薄い。
「何かあったら聞きますよ?」
「んー。ありがと、アルエちゃん…」
口先ではそうあしらうが、レイヴンの表情は固いままだ。
『具合でも悪いのかな?それとも…』
――何かを隠している?
等とレイヴンの表情を探ろうとした時、
「アルエちゃん」
レイヴンに呼ばれ、そちらを振り向く。
「ごめん…。いや、ありがとう」
「え?」
「…何でもないよ」
「は、はい」
「あの…ね、アルエちゃん」
いつもは見られない、歯切れの悪さに様子がおかしいことを再度認識をする。
――さよなら、いや…そんな事を伝えたいわけじゃなくて。
「…愛してる」
「レイヴンさん…」
「行こか、アルエちゃん」
レイヴンの反応の悪さは日に日に増していき、ミョルゾへ到着した時はアルエにすら何も告げず、ふらふらと何処かへ行ってしまった。
いつもの放浪癖といえばそれまでなのだが、最近の態度を鑑みると、心配になってしまう。
「レイヴン…さん?」
アルエはレイヴンの後を追い掛けたかったが、ユーリが長老の元へ行くとのことを聞くと、彼を追っている場合ではないと、ユーリに付いて行った。
何故、この時レイヴンに付いて行かなかったのだろうか。
付いていれば、あの様なことは起きなかったのではないかと、アルエは後悔することを、まだ知らない。
「嬢ちゃん、ちょっといいかな?」
「レイヴン?」
「嬢ちゃん、…ごめん」
「…!?」
エステルとレイヴンが姿を消したのは、その後の事だった。
さよならよりも愛してると伝えたい、ごめんねよりもありがとうと伝えたい