「シルフ!」
精霊の名前を叫んだと同時に周辺の空気が女性の姿を形作り、それが具現する。
その様子をぼんやりと眺めている少女が居た。
「凄い、なあ…」
思っていた事がいつの間にか言葉として口から漏れ、それをシルフの契約者であるクラースに聞かれる。
「何がだ?」
「クラースが」
「…私がか?」
「精霊の研究してて、最終的には契約して召喚して、これを凄いと言わない方がおかしいよ」
――凄い、か。私には似合わない、縁のない言葉だな。
クラースを賞賛した少女、アリシアの言葉を聞き、ひっそりと苦笑する。
学会で発表するも、論文をはね除けられ、冷笑を浴びた時の事を思い出す。
理論上では可能な事でも、実際に事を起こそうとなると中々大変なものだった。
今なら、学者達の目の前で召喚して、論文を認めさせることも出来るが、それをしたところで何になるだろうか。
あまり良い出来事とは言えない過去を思いだし、深く溜め息をつく。
子ども扱い1