第17話「調理の前に自己紹介!」のスキ魔



「エギー先生もエプロン着る!?!?」
「誰が着るかッ!!」
「えー… こんなに可愛いのに、どして!?」
「ええいっ! ひらひらさせるなっ、鬱陶しい…ッ!!」

ひらひらと。 カルエゴの目の前でそれはそれは楽しそうにエプロンを見せつける、クララ。 そのエプロンは、ナマエから配られたものとは違い、フリルがたっぷりと施された真っ白のもの。 それはさながら、メイド服。 そんなものを見せられて、カルエゴが黙っているわけなどない。 噛み付かんばかりにクララに返事をすると、彼はフンっとそっぽを向いた。

「せっかく超デビキュートな、フリフリエプロン出したのにぃ…」
「さすがにそれは… 絵面が酷すぎて笑えないんじゃ…?」

ぶーぶーと唇を突き出しイジけるクララ。 そんな彼女を宥めるように、ケロリがそっと呟く。 カルエゴのメイド服姿… 想像するだけでも、恐ろしい。 外見へのこだわりが人よりも強めなケロリは、自身が想像したカルエゴのインパクトの強すぎる姿に青褪める。

「じゃあさじゃあさ! ナマエさんに着てもらうってのは、どう!?」
「大賛成ですぞ…っ!! あなたが神か…ッ!!!」

そこですかさず、リードが新たな提案をする。 まさに思春期真っ盛りの男の発言。 そんな彼の案に、カムイは全力で賛成の意を示す。 美人で可愛いナマエが着るならと、ケロリも納得している様子だ。 しかし…

「そのような "低俗な衣装" をナマエさんに着させるなど、言語道断…ッ! イルマ様…! 全力で止めましょう…っ!!」
「えっ!? あ、アズくんっ!?」

ここで黙っていないのが、ナマエ信者のアスモデウス。 クララが持っているエプロンは、俗に言う "コスプレ衣装" 。 露出も多く、調理を目的としたものとはほど遠いデザインとなっている。 いわゆる、パーティーグッズだ。 しかし、これまた黙っていないのが、賑やかしのふたりで…

「えーっ! なんでなんで? 絶対これナマエちに似合うよ! アズアズ!」
「そうだそうだッ! それにメイド服だよ!? まさに男のロマンじゃん!」

『ねーなんでなんでー』 と、聞き分けのない子どものようにアスモデウスの周りをぐるぐると回り始める、クララとリード。 延々と続けられるその行為に、アスモデウスの苛立ちは募るばかり。 そして我慢の限界に達したのか、ワナワナと震えながら、大声で叫んだ。

「っ、ええいっ! やかましいッ!! 似合うか似合わんかの話ではない! 今日は調理実習という目的があるのだぞ!? そのような場で、そのような格好など…っ!」
「……でも、僕、ちょっと見てみたい、かも」
「いっ、イルマさまっ!?」

入間からのまさかまさかの発言に、声を裏返しながら驚くアスモデウス。 頬をほんのりと染めて呟くその姿に、彼は開いた口が塞がらない。

「うふふっ、イルマくんったら、意外と大胆ね〜?」
「ほんとイルマくんって見た目に寄らず欲深いよね。 そりゃ僕も本音を言えばナマエさんのフリフリエプロン見てみたいよ? でも初対面だしそんなことお願いできる精神は持ち合わせてないというか… それにいくらナマエさんがおっとりしてて何でも許してくれそうな雰囲気あってもさ、常識的に考えて無理でしょ。 まぁ僕が何を言いたいかと言うと、お願いするなら、イルマくんがしてねってことなんだけど…」
「急にすげー喋るじゃん、プルソン…」

それはそれはペラペラと。 入間の発言に対し、自分の意見を饒舌に述べるプルソン。 その情報量の多さに、思わずジャズが突っ込みを入れる。 しかし結局のところ、プルソンも入間と同意見のようで。 つくづく男とは… 欲に弱い生き物である。

「…なんでもいいけどさぁ、早くしない?」
「うおっ、アガレス起きてたのか」

ふわぁっとあくびをしながら、ジャズの側にやって来たのはアガレス・ピケロ。 眠そうにしながらも、何とか目を開けている彼は、それはそれは怠そうに呟く。

「ナマエさんが、ソワソワしながらこちらの様子を見てるでござるよ…!」
「あっ、ほんとだ。 かっわいー!!」
「それに、カルエゴ先生の顔が…」
「カルエゴ先生の、」
「顔…?」

アガレスに続き、騒ぐ彼らに声を掛けてきたのは、ガープ・ゴエモン。 少し前からナマエが自分たちの様子を窺っていることに気づいていた彼は、遠慮がちに口を開く。 そんな彼の言葉に呑気にナマエを眺めるリードだったが… 続くガープの言葉に、視線をカルエゴへと向ける。

「貴様ら… 先程から黙って聞いていれば、無駄口ばかり叩きおって……」
「え、えっとぉ〜… カルエゴせんせ? そんな顔しちゃ、せっかくの男前が台無しに、」

そこには、まさに般若が。 ゴゴゴゴと黒いオーラを背負い、怒りを露わにするカルエゴ。 そんな彼の怒りを鎮めようと、リードは慌てて煽て上げる。 しかしそれが、カルエゴに通用するわけもなく。

「さっさと着替えんか、馬鹿者どもッ!!!!」
「ぎゃぁああ!!! 暗黒大帝降臨…ッ!」
「すんませんすんません! すぐに着替えますぅぅ!」

怒鳴る、カルエゴ。 そのあまりの恐ろしさに、騒がしかった彼らは脱兎の如く着替えに専念する。

「…毎度毎度、懲りん奴らよ」
「雀百まで踊り忘れず。 多分アイツら、一生あのままダ」

そんな馬鹿な彼らを、サブノックとアロケルは呆れ顔で見つめるのだった。



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