第4話「その惚気のろけ、甘過ぎます」 のスキ魔



「ナマエさんの餃子はねぇ、皮から手作りなんです。 …皮からですよ!? 外はパリッと、中は驚くほどジューシーで、肉汁がジュワッと溢れてくる… 中華料理店を開けば大儲け間違いなしです!」
「…はぁ」

ダリの熱弁に、心底興味なさそうに返事を返すカルエゴ。 餃子を口に運び、『うん! 美味い! だけどナマエさんの餃子の方がもっと美味い!』 と言いながら、ビールをゴクゴクとあおるダリ。 普段の彼なら絶対言わないような、店主に対して微妙に失礼な言葉に、カルエゴは少し困惑していた。

「餃子に限らず! ナマエさんが手間暇かけて作った料理を、僕は毎日食べているんです! どうです!? 羨ましいでしょう!」
「いえ、全く」
「カルエゴくん、そこはノッてあげないと…!」
「何故私が興味もないことに話を合わせねばならんのだ」

自慢げに話すダリに対して、これまた心底どうでもいいと、カルエゴは辛辣に返事を返す。 そんな彼の態度に、バラムがすかさずフォローを入れるがそれも虚しく。 カルエゴは聞く耳持たず。 一刀両断してみせた。

飲み会が始まり、酒をどんどん飲み進めるに連れて、ダリの口は饒舌になっていった。 そして酔いが回った今、口を開けば、ナマエと言う者のことばかり。 いくら酔っ払いの戯言ざれごととはいえ、こちらにも限界というものがある。 いい加減にしろ。 カルエゴは内心、そんなことを思っていた。

「…シチロウ。 この状況はいったい何なのだ」
「いや、僕にもサッパリ…」

未だに目の前でナマエのことを語るダリを放って、カルエゴは隣に座るバラムに問い掛ける。 彼もこんな事になるとは予想だにしていなかったようで、困惑の色を隠せなかった。

「…ナマエさんって、ダリ先生の恋人なのかな?」
「ふん。 だとしたら、余程熱を上げているようだな。 …見ろ、あのだらしのない顔を」
「ほんと。 幸せそうに話すよね、ナマエさんのこと」

こちらのことなど構う事なく、ペラペラとナマエのことを話し続けるダリ。 そんな彼の表情からは、彼女を大層いつくしんでいるのが伝わってくる。 カルエゴは辟易とし、バラムは微笑ましげにダリを見る。 ふたりは彼を見ているだけで、お腹いっぱい、満腹状態だった。

「カルエゴ先生! バラム先生! 聞いてますか!?」
「あっ、すみません。 少しカルエゴくんと話を…」
「も〜っ! ちゃんと聞いてくださいよ? ナマエさんの豚の角煮はですね、タレが絶品で、それはそれは柔らか〜く煮込んであって…」
「………」

ダリのナマエ談義は、終わらない。 もうこれ以上は食べられない、胃もたれする。 そう思っても、次から次へとダリの口は開かれて… 結局、彼が酔い潰れるまでそれは続けられたのだった。



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