「( 朝っぱらから、よくやるよなぁ… )」
食堂のテーブルに頬杖をつきながら、ツムルはそんなことを考える。 彼の視線の先。 そこには心底楽しそうにナマエにちょっかいをかける、ダリの姿があった。
「( 邪魔になるからテーブルに、って。 言ったのはどこの誰だよ、全く… )」
朝食を作るナマエの邪魔にならないよう、離れようと提案した、ダリ。 その提案をした張本人が、現在進行形で彼女の邪魔をしている。 そんな状況に、ツムルは思わず心の中で悪態を吐いた。
「( しっかしまぁ… 見事なまでの "濃い桃色" だな )」
ツムルの家系能力、鑑定色。 相手の精神状態を、色で視認・判別できるという、非常に優れた能力だ。 少し離れたテーブルから、こっそりダリの精神状態を盗み見れば、現れたのは、鮮やかで色濃いピンク色。 この色が意味すること、それは…
「( 深い愛情と独占欲。 色の濃さは感情の強さに比例するから……… うわぁ… ダリ先生、本気のやつじゃん… )」
色濃く現れたダリの心境を知り、ツムルはげんなりとテーブルに突っ伏した。 ダリのナマエへの想いは、本気も本気。 表面上、軽い男を演じているようだが… ツムルには、分かる。
「( こんなん横から手出したら、どうなることやら… 触らぬ神に祟りなし。 うん、俺は黙って見守ろう、そうしよう…! )」
未だナマエにちょっかいを出すダリを視界の端に映しながら、ツムルはそう心に決めるのだった。