「小春ー!!」
「アラ何?ユウくん」
「昼飯行こ!な!」
「え?だって名前ちゃんは?」
「ええってええって」
よくねぇよ馬鹿
こっち向いてdarlin!
一氏ユウジ、私の彼氏。
勇気を出して告白してから早半年。
私達はデートは疎か放課後に遊びに行く事もなく、二人きりになる事もなく、健全過ぎる程の付き合いを続けている。愛なんてちっとも育めないし、むしろユウジに「好き」と言われた事がない。
あれ、何か言ってて悲しくなってきた。泣くな私。
昼食の時間にユウジの元に行っても、絶対に奴は小春ちゃんの元でお弁当を開いている。
毎日「今日もお邪魔するわ、名前ちゃん」なんて気遣いもしてくれる小春ちゃんは好きだ。三人でご飯を食べても、私に話を振ってくれるのは小春ちゃん。ユウジは私をガン無視である。
あれ、私小春ちゃんと付き合った方がいいのかな
私としてはユウジの傍に居たいし、手も繋ぎたいしデートだってしたい。時々するメールも2・3通で終わってしまうので、正直…かなり寂しい。
…ユウジは私の事、好きじゃないのかもしれないなぁ。
「…小春、何処行くん?」
そんな中、早々にお弁当を平らげた小春ちゃんは、机の中から何やら大量の資料を待って立ち上がった。
それを見上げるユウジの声色は、まるで母親に置いていかれるような子供の声だ。目なんか潤んでいる。そう考えたら、私はユウジに目を合わせてもらった事がない。
「先生に呼ばれてるんや。」
「俺も行く!」
「アカン、呼ばれとるんはアタシだけやもん。ユウくんはお留守番」
じゃあね、と顔を上げた小春ちゃんは、私にそっとウィンクした。
まさか、まさか…気を使ってくれたの?
颯爽と廊下へ出たIQ200の神様の背中を切なげに見つめるユウジ。悔しいけど、今ならユウジが「小春〜!」と抱きつく理由が分かる気がする。小春ちゃん、アンタ最高よ…!!
「ねぇユウジ」
小春ちゃんから貰ったチャンスを、私は生かしてみせる!!
「今日、一緒に帰らない?」
「ん?…まぁええよ」
ありがとう神様!!!
でもコイツ小春ちゃんがいなくなった途端に私と目も合わさず携帯いじってるんです。はっ倒していいですか神様。
午後からの退屈な倫理の授業も、大嫌いな歴史の授業も今日はなんだか新鮮な感じだ。
掃除の時間は、緊張のあまり友達に「なんか汗酷くない?」と心配されてしまった。大丈夫だ、問題ない。
ああ、何を話して帰ろうか。
***************
「こ、小春…やっぱり一緒に…」
「アカンで。いつまで恥ずかしがっとるんや」
next→