「ねぇ」
「ねえってばユウジ」
「なんや」
放課後の帰り道。
私の前を早足で歩くユウジが振り返った。寒さのせいで鼻がちょっと赤い。
「ユウジは私の事、嫌い?」
≪こっち向いてdarlin!≫
私が鼻声になっているのは、泣きそうなわけじゃない。きっと寒さのせいだ。
でも、ここで「嫌い」と言われてしまうと、私はきっと泣くんだろうな。
「…」
半年前に告白した時も、こうやって猫目をまん丸に開いて私を見ていたユウジ。その時も返事を貰うまでの時間が長く感じたけど、今は凄く沈黙が痛くて、不安が私の胸を容赦なく引っ掻き回す。
「何でそんな事…」
落ち着いたユウジの声。「そんな事」を聞く自分が酷く情けなくて、私はこんなにユウジが好きなのに…という感情がぐちゃぐちゃになって自然と目が潤む。
やばい、泣くな私。
ユウジに面倒臭い女って思われる。
「な、何で泣いとんねん」
あ、もう泣いてた私。
どうしよう、ユウジに嫌われたかも。
「だって…ユウジは私と一緒に居たくないみたいだから…」
みっともなくしゃくり上げて、それでもユウジの顔を見ていないとユウジが居なくなってしまいそうで怖かったから、私は顔を上げた。
2mくらい先に居たユウジが目の前に居た事実に驚く私。
そして私を抱き締めたもんだから、更に驚いた。
「嫌いとちゃう。ちゃうねん」
初めて聞くようなユウジの声。
ああ、困らせてごめん。
「二人になるのが恥ずかしかったんや」
こんな通学路で抱き合う方が恥ずかしいじゃん、そう言おうとしたが、もう何も言葉にならなかった。そのままユウジの腕の中でわんわん泣く。
次の日「がっしり名前ちゃんを抱き締めとった割には、ユウくん目ェ泳ぎまくっとったわぁ」と、小春ちゃんから告げられた瞬間、ユウジに繋いでいた手をバッと解かれた。っていうのは、また別のお話。
END.
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恥ずかしがり屋のユウジイイネ!