今日は何を隠そう、私の誕生日である。


誕生日。



自分から「誕生日なんだよ」と言うのもなんとなくあれなので自分からは言わないが、知ってる人はいる…と思う。

知ってる一部の人がちょっとお祝いしてくれるだけで私の心はいっぱいだ。
それだけでいいのだ。


…まぁ、そう考えてる以上自分は、誰かが私を祝ってくれること、誰かがプレゼントをくれることを期待してしまっているわけだが。


はい。すみません。期待してるんです。サプライズみたいに

「お前誕生日だろ?ほら、おめでとう。」
「え?あ、自分でも忘れてた…。ありがとう!」

ってな展開を期待しちゃってるんです。前の日からワクワクしてるのに、人の前では忘れてた的な演出をしようとか考えてるんです。

素直に言うと、誰も自分の誕生日祝ってくれなかったら寂しいです。

そんな思いを胸に抱いて、ギクシャクしながら登校したわけだが。

すでに放課後である。


テニス部の奴等とも何人かと廊下ですれ違ったりもしたけど、とくに変わった反応は無し。だ、誰もしらない…?
もしくは忘れてる…?

自分から意識して誕生日を言ったことがあるわけではないが、やはりさみしい。


「あら、名前ちゃん。」

「小春ちゃん…」


小春ちゃん…!小春ちゃんなら覚えてるんじゃないかな!だってIQ200だもの!


「今日、部活早めに終らせて部室でミーティングやから、名前ちゃんも参加してな」


小春ちゃんは私より女の子らしく、可愛くウインクしていった。

うん。ミーティングね。

「おっ、名前」


謙也!スピードスターの彼なら、私の誕生日を高速で祝ってくれるんじゃないかと思っていたんだよ!やはり私の目に狂いは無かった!!


「これ、借りた本」

「え?
あぁ、うん。どうだった?」

「おもろかったわ。また続き貸してな。」

「うん」

「ほな部活でな」


私の目は狂っていたようだ。

あの高速男、人の誕生日を高速で忘れなくてもいいじゃないか。この漫画今日貸したなっかりだしな。早ぇよ読むの。こんな事になるなら1ページ目に「犯人は妻」ってネタバレ書いて書いてやればよかった。


「名前」

「ひぎゃっ!白…石?」

脳内で謙也をド突いていると、部長の白石がやってきた。
ミスターバイブル!迷える子羊の私をお祝い下さい!


「ひぎゃって…ああ、これ日誌な。今日も頼むで、マネージャー」

「うん」


うんしか言ってねぇ私。っていうか言えねぇ。言っとくけど泣いてないかんな。


「名前ー!」

「ああ、ここにおったばい」


下駄とテニスバックを持った千歳と、ニコニコと私に笑いかける金ちゃん。
今は金ちゃんの笑顔さえも眩しくて直視できない。


「な、なに?」

「あんなー今日は名前のたn「金ちゃん、ほら早く名前と部活行かないと毒手ばい。俺らで迎えに来たけんね。」


モガモガと暴れる金ちゃん。今何か言おうとしたような気がするが、きっと気のせいだ。滅べ誕生日に祝う風習。


「さ、行くばい。」


重い足取りで部室に向かう。ホールケーキとか誰かロッカーに隠したりしてないだろうか…

誰か一人ぐらい知っててもいいのになぁ。
自分から「今日は何の日でしょう!」って言ってみるか…。
いや、むなしいだけだからやめよう。


「…光?」


部室の裏から光とユウジ、ちょっと後から師範が出てきて、3人とも私を見てギョッとした顔をした。そんなに不幸を背負った顔してる?じゃあ祝えよホラ3人で。


「そんなとこで何してん?」

「あー、コイツ裏で寝ててな」

「ユウジ先輩と師範に起こされましたわ」


そうですか!!私の誕生日を祝いもせずに寝ていたと!ピアスの穴紙粘土で塞ぐぞ!なんて心の中で私が嗚咽を漏らしている。泣くな心の中の私、帰って二人きりの誕生日パーティを開催して鼻眼鏡をかけよう。


「…名前」

「なに?師範」

「あー…な、なんでもあらへん」


師範の表情が同情に満ちていたのはきっと気のせい。でも私のHPはガリガリ削れているのは本当の事である。

擦れた心を抱えながら、今日も部活が始まった。
 
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