穴があったら続編。





私が仁王くんの後ろの席になって早3ヶ月。帰りのホームルームで、担任の先生が信じられない言葉を口にした。


「よし、それじゃあ明日は席替えをする」


私は世界が崩落する音を聞いた気がした。


ふざけんじゃないわよ、折角仁王くんとお話できるようになったのに席替えですって?冗談はその禿げ散らかったすだれ頭だけにしなさいよね担任。そのうっすら降り積もったような粉雪並みの髪の毛を、私の怒りのファイヤブレスで焼き切ってやろうかこの村人Aが…!!!


「名前ちゃん」
「ギャアアアアだから急に振り向かないでって言ってるじゃない仁王くん!!私今絶対変な顔してたでしょ!」
「般若と歌舞伎メイクを足して2で割った感じの顔しとった」
「いや、そこは"そんな事ないぜよ"って誤魔化すとこじゃない?」
「プリ」
「何今の顔超可愛いんだけど」
「しょうがないのー、後から写メって送ってやるぜよ」
「はああああん!!!」


そう、何を隠そう私と仁王くんは大の仲良しになった。思ったことを全部口にする私の性格が気に入ったと仁王くんは言っていたが、私はいつポロリと「仁王くんの裸が見たーい」なんていうクソビッチな本音が出てくるかハラハラものである。そんな私を尻目に、携帯をカチカチと操作する仁王くんが口を開いた。

「それより席替えじゃて。どうしようかの」
「え、何が?」
「名前ちゃんは俺と席が離れてもいいんか?」
「よくない」
「うんうんいいお返事じゃ」


嗚呼…仁王くんが私の頭を撫でてる。NA☆DE☆TE☆RU!!前夜の私は何故自分の髪の毛に瞬間接着剤を塗りたくっておかなかったんだ!若しくは自分の唾液!もう私仁王くんの生活の一部になりたい!


「名前ちゃん、声が大きいぜよ」
「また声に出てたかな」
「うん」
「善良します」
「ピヨ」


起立、礼でホームルームはおしまい。仁王くんは部活へ行き、私は家へと向かう。今日も部活頑張ってね仁王くん。
夕方くらいに部活お疲れ様ーってメールしようかな…と思い立って携帯を開くと、仁王くんからメールがきていた。さっきの可愛い仁王くんが写真添付されていたので、私は悶々と沸き上がる煩悩を砕く為に水風呂に入った。欲情などしない…浴場にいるけど。ハッハッハなーんちゃって!!



翌朝、熱が出ました。
水風呂が悪かったのか私のダジャレが寒すぎたのか知らないけども、とりあえず39度はちょっとハイリスクすぎませんかね神様。私のダジャレはそんなにお気に召しませんでしたか、残念です。

「仁王くんと一緒の席じゃないと死ぬから学校行く」って言ったのに、お母さんが鬼の形相で「寝てろ」って言うからすごすご部屋に戻った。私の般若顔はお母さん似かもしれない。仁王くんに「熱が出たので今日はお休みします」ってメールを送信したと同時に、視界が滲む。…もっと、いっぱいいっぱいお話したかったのにな。


【メール着信:♪仁王くん♪】


お昼、枕に伏せていた私を呼び覚ましたのは仁王くんの設定着信音。添付されていた写真を開くと、机に座ってブイサインをする仁王くんが写っていた。


FROM:♪仁王くん♪
Sub:プリ
添付:(65kb)
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本文:

またお前さんの
前の席じゃよーっ(´▼`*)




とりあえず私は冷静にブイサインする仁王くんの写真を待ち受け画面に設定した。












ペテン師に不可能はない!








END.

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先生のすだれは犠牲になったのだ…




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テーマ「人外ファンタジー」
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