彼はエロい。彼といっても彼氏ではない。私は年齢=彼氏いない歴の夢見がちな女子高生だ。


では誰がエロいのかというと、前の席の仁王雅治くんがエロい。

エロいと言っても「名前ちゃんのパンツが見たいぜよ」とかいうエロさじゃない。いや、私はいいんだよ。仁王くんにそんな事言われたら私は履いている毛糸のパンツを脱ぎ捨てて高らかとスカートをめくり上げ、仁王くんに私の秘めたる至極のパンティーを見せ付ける。何なら写真撮ってもいい。

いや話が反れた。彼の何がエロいのかというと、顔・体・仕草全てがエロスの神に愛されている。

例えば今の仕草。授業中、彼はうなじを右手で撫で、小さくため息をつきながら首を鳴らす癖があった。

そら見た事か。
エロいよ仁王くん。その骨ばった指の関節も爪の形も、綺麗なうなじも、ため息も全てがエロスだよ。E☆RO☆SUだよ!!!!中学時代はクラスがずっと違ったから気付かなかったし興味も無かったけど、まさかこんなに破壊力があるなんて。イケメンって怖い。


後ろの席も超ラッキーだけど、前の席なら仁王くんのため息の微分子なら浴びれたんじゃないかな。何より仁王くんの薄い唇や通った鼻筋や白い肌やキツめな瞳やキュートなおでこ、そして彼の唇の下で我が身を主張するホクロが間近で見れるなんて
ああ、本気で羨ましくなってきた。河部くん(前の席の子)席変わってくれないかな。


「名前ちゃん」


いや、でもプリントを後ろの席に廻す時のチラッと見える仁王くんの長い睫毛が堪らなく綺麗なんだよね。くそっ迷うな。


「名前ちゃん、プリント」


ああ、しかも仁王くんはワイシャツのボタンを必ず開けているから、首筋がもう「ペロペロして〜ん☆」って訴えてくるしなぁ。困ったなぁ。


「名前ちゃん?」
「そぉい!!!!」


近い近い近い近い近い近い近い近い近い近い仁王くんが超近い!!!!完全に後ろを向いて私の顔を覗き込む仁王くんが近くていい匂いでその薄い唇に無心でむしゃぶりつきたくなっtて、変態か私は。ああ変態だったわ。


「あ、あう…ご、ごごごめ、仁王く、ボーッとして…」
「具合でも悪いんか?」


終業のチャイムが鳴る。いつの間にか授業は終わっていた。授業中にとんでもない事を考えるなお前は!!って罵られてもいいくらいの目で舐めるように仁王くんを見ていたのに、心配してくれて何だか罪悪感。嗚呼、その困り眉を毛根から舐め尽くしたい。むしゃむしゃしたい。


「ノート書けたんか?何なら俺の見せちゃるよ」
「う、あう…ノ、ノート…?」


仁王くんの目線が私のノートに落ちる。私もその麗しい目線に釣られて自分のノートを見た。



仁王くんのうなじ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
仁王くんいい匂い
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仁王くんの尻尾触りたい
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
仁王くんのあくび回数:5回





「…」
「…」
「…」
「な、何赤線まで引いてんの私…」



分かってた、突っ込み所はそこじゃないって分かってた。だから何も言わずに私を気持ち悪がって今後はシカトして欲しい。今、私の脳内では「千の風に○って」が厳かに鳴り響いているんだよ。そこに私はいません。この大気圏内から消え去りたい。正直者の自分の腕に嫉妬すら覚えていると、仁王くんが口を開いた。


「俺、どんな匂いするん?」
「……………は?」
「今日は香水付けとらんのじゃが、名前ちゃんが好きならこれから付けんくていいかのう…」


自分の長い髪を引っ張ってくんくんと匂いを嗅ぐ仁王くんを唖然としながら見ていると、彼は不意にニヤリと唇を歪ませた。


「名前ちゃん、知っとった?」
「う、うぇ?」
「名前ちゃんの考えてる事、今まで全部口から出とるよ」











があったら
ブラジルまで貫通させて海外逃亡したい。





「名前ちゃんは俺が好きなんじゃなー」
「…」
「俺も名前ちゃん好きじゃよ」
「…」
「なーなー顔上げてくんしゃい」
「…今」
「ん?何?」
「……今の舌出す仕草、最高」
「もっかいやっちゃろか、ホレ」
「はぁぁん!!」









END.

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これただの私だ。




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